病気と健康

NO11(2002.12.01) ピロリ菌って知ってますか?

  とうめい厚木クリニック 院長 

野村 直樹

 ピロリ菌。多くの皆さんはもうご承知のことと思います。酸のとても強い胃の中で生きているバイキンで、胃癌や潰瘍をはじめ胃、十二指腸のさまざまな病気の重要な原因の一つであること。平成11年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍に限ってその検査、治療が保険適応になったこと。特に日本人に陽性者が多いこと。除菌によって潰瘍再発はほぼ無くなること。ただし除菌が成功すると胸焼け等の胃酸逆流による症状が出現したり悪化したりする場合があること。などなどをお伝えしてきました。
 当院では現在までに約161名の方にピロリ菌検査を行い、128名の方にピロリ菌除菌を行いました。
 今回は当院でのピロリ菌除菌の経験をもとに、その結果をお伝えしたいと思います。
 検査をした患者さんの内訳は胃潰瘍74名、十二指腸潰瘍(穿孔症例含む)45名、萎縮性胃炎のみ31名、早期胃癌4名、急性胃十二指腸炎6名、その他7名(一部重複症例あり)でした。
 ピロリ陽性率は胃潰瘍では72名/74名:(97・3%)、十二指腸潰瘍で43名/45名:(95・6%)、萎縮性胃炎で29名/31名:(93・4%)、早期胃癌で4名/4名:(100%)、急性胃十二指腸炎で4名/6名:(66・7%)、その他で4名/7名(57・1%)でした。やはり胃十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃癌ではかなりの高値を示していました(表参照)。
 除菌を施行した128名中、除菌後判定が可能であった方は86名で、80名が除菌成功と判定され、6名は除菌後検査でもピロリ菌陽性と判定されました。除菌成功率は93・0%でした。失敗した6名のうち3名に再除菌を施行し、1名は陰性化、1名は未判定、1名は陽性のままでした。
 除菌薬による副作用は調査可能であった115名中62名(53・4%)に認め、軟便あるいは下痢が60名(52・2%)、便秘が1名(0・9%)、口内炎が1名で、副作用により投薬を中止する必要のあった方はいませんでした。残り53名(46・1%)はまったく無症状で副作用を認めませんでした(グラフ参照)。
 除菌成功後の方の中期症状としては、約1/3の方が除菌前に比べ明らかにおなかの調子が良くなり、絶好調を宣言されています。4名の方に胸焼けの出現、あるいは悪化を認めています。
 除菌成功例にはご本人の希望等がなければ原則的に胃薬は中止としていますが、潰瘍再発は今のところ認めていません。
 以上当院におけるピロリ菌除菌経験の簡単な報告をさせて頂きました。耐性菌の問題、再除菌の問題、除菌後の長期的経過観察の問題等まだまだ検討されていくべき事項はありますが、さまざまな胃の病気にとってピロリ菌除菌が画期的な手段であることは間違いないことと認識しています。再発する潰瘍等で悩まれている方、萎縮性胃炎といわれ、おなかの調子がおもわしくない方、是非一度消化器科までご相談頂ければと思います。

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