病気と健康

 NO16(2004.8.1) 非定型抗酸菌症について

東名厚木病院医師

杉山 茂樹

 結核は従来は国民病として恐れられていましたが、検診が発達した現在ではわずかに散発する程度になりました。しかし、非定型抗酸菌症については、あまり知られておりません。この菌の感染力はよわく、人から人に感染を証明したことはありませ
ん。一般的に土中、大気、水等の自然界に存在することが分かっています。

 【菌種】細菌学的には放線菌目、ミコバクテリウム屬に属し、抗酸菌群に分類されます。抗酸菌群には結核菌、らい菌、そして非定型抗酸菌群があります。非定型抗酸菌群とは約60種類の菌種がありますが、人に感染する菌種は限られており、
M.avium(アビウム菌)、M.intracellere(イントラセルラーレ菌)が70%を占めます。
 次にM.kansasi(カンザシー菌)が20%で他の菌種が10%です。感染率は10万人に1.45人(1985年)、2.99人(1992年)で年間に日本では約3700人の発生が報告されています。

 【症状】症状が出現する頻度は低く、治療しなくても、炎症が進行しない場合もあります。一般的には、咳、痰、倦怠感、発熱、血痰等の症状が見られます。レントゲンでは、はじめに小粒状影、索状影、気管支拡張、それから空洞形成し、多発空洞形
成にいたり最終的には呼吸不全となります。
 空洞形成までの年数は3年から20年、症状では呼吸不全にいたるまで約20年罹ります。これらは大凡の臨床経過であり、糖尿病等の合併症があると進行が早い場合があります。

 【検査】従来のレントゲン検査、CTでは結核菌と非定型抗酸菌症の区別はつきません。喀痰の培養が必要です。多くの場合は3日間の痰の検査で診断がつきます。軽症の場合でも、現在では気管支鏡で診断が可能になりました。

 【治療】結核の薬を使用します。しかし、結核に効果がある薬でも、1剤では耐性菌には効果がありません。そこで2?3剤の薬を服用していただきます。これらの結核の薬は肝障害等の副作用があります。月に1度は採血して検査が必要です。
 また、結核では6ヶ月の短期療法が有ります、しかし、非定型抗酸菌の多くは薬剤抵抗性であり、結核菌よりさらに長く2年に渡る投薬が必要になります。それでも除菌できないこともありますが、根気よく治療を続けましょう。

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