ゴミ問題コラム「風見鶏」 

 棚沢への説明責任(2006.06.15)

 厚木市のごみ中間処理施設建設候補地の選定問題で、棚沢地区住民が怒っているのは、候補地の選定について、一度も地元に説明や協議がなかったということである▼議会や公開質問状への市の答弁によると、地元自治会長に説明した後、臨時記者会見を行ったというが、自治会長へは報告しただけで、住民に十分検討する時間も与えず翌日新聞発表したのである▼市は地元の会合に出向いて説明する予定でいたというが、地元から「出席におよばない」と言われたので、協議を持たなかったと子どものいい訳のような説明をしているが、これでは施策推進上、最低限必要な説明責任を放棄したようなものではないか▼新聞報道以来、1年が経過するが、棚沢と市側は一度も話し合いが持たれず、議会の陳情も継続になっている。地元と市側の話し合いがないまま、議会が陳情を採決に持ち込むとしたなら、今度は議会が批判を受けるのは避けられない▼陳情は市長にも出ている。市側も議会審議の結果を待つというあなた任せの対応をとるのではなく、まず、地元へ出向き候補地選定の経過と理由を十分に説明することが必要だ。地元に何もしなかったという市の姿勢が問われているのである▼この場合、「説明したことが理解を得た」と勝手に思いこむのが行政側のやり方だが、そうした手法も改めなければならないのはいうまでもない。市民が主役とは、市民主導で積み上げた多様な意見をまとめ、施策に反映させることであるが、市のやり方はこれに逆行している。

 エコマネーで生ゴミ処理が本格稼働(2005.07.15)

 厚木なかちょう大通り商店街が取り組んできた「エコマネーを利用した生ゴミリサイクル事業」が本格稼働した。家庭から出る生ゴミをエコマネーと交換してたい肥化し、その肥料を近郊農家の有機栽培に活用してもらうもので、収穫した有機野菜は商店街を通じて消費者に販売される▼「キッチンリサイクル」と名づけられたこの事業は、同商店街が環境省の支援を受けて、2年前から実証実験に取り組んできたもので、商店街の活性化と地産地消の循環システムの構築を目指すのが目的だ▼同商店街はこれまでにも「環境にやさしいエコ商店街」に取り組んできた。平成13年、商店街に空き缶・ペットボトルの回収機を設置、利用者が空き缶やペットボトルを入れると加盟店で使えるサービス券があたる事業をスタートさせた▼また、15年2月には風力・太陽光発電を利用した全国初の「ハイブリッド街路灯」を設置した。街路灯には風車とソーラーパネルが取り付けられていて、旧街路灯に比べて40%電気代の節約につながった▼同商店街のコンセプトは「エコラボレーション(環境・共同作業)」である。木村理事長は「商店街はただ物を売っていくだけではだめ。たくさんのお客さんと共同して生ゴミリサイクルに取り組みたい」と話している▼中心市街地の商店街の活性化のあり方が検討される中、こうした取り組みを続けている同商店街の発想と行動には敬意を表したい。

 家庭に無料で入ってくるゴミ(2005.05.15) 

 家庭から出る可燃ゴミの処理を有料化する自治体が増え始めている。資源ごみとの分別を徹底してごみ減量化を図るとともに、自治体の処理費用を抑えるのがねらいだ▼県下では二宮町が処理手数料を条例化しており、小田原市ほか寒川、大磯など1市10町が市指定の袋を使って可燃ごみの収集を有料化している。大和市でも06年度から有料化する計画をすすめている。同市の計画は、家庭から出る可燃ごみを入れる袋を市の指定にして、有料化する方法▼スーパーなど約200カ所で購入できるようにして、指定のゴミ袋以外は収集しないとういうやり方だ。同市では可燃ごみの中に、紙・布類の資源ゴミが約45%含まれ、分別が行き届いていないのが現状だという。有料指定ごみ袋の導入で、分別収集が行き渡り、排出量が年間で約1割削減され、処理費用も減ると見込んでいる▼横浜市では分別品目を拡大したことで、4月分の家庭から出たごみの収集量が1年前に比べて2割減ったという。確かにゴミ処理費用を有料化すると余計なものは買わなくなるし、分別の徹底で排出量を減らすことにもつながる▼ところが、家庭には消費者が有料で購入する品物以外に、チラシやビラ、DMなど無料で入り込んでくるものが相当ある。これらは1カ月もたまると大量のごみになるが、残念ながらこれを止める手段がない。ごみ減量対策でいつも思うのだが、これを何とかできないものかと思う。

 産廃が押し寄せてくる(2004.02.01)

 1月30日の朝日新聞が1面で次のようなニュースを報じていた。産業廃棄物を自治体などが設置する一般廃棄物(家庭ごみ)用の焼却施設で受け入れる事業を、環境省が来年度から本格的にスタートさせるという内容だ▼これまで一般廃棄物の処理責任は市町村、産廃処理の責任は事業者という原則だったが、これを軌道修正して一体処理を進めようというもので、産廃の処理施設不足を補うとともに、ダイオキシン規制の大幅強化以降、大規模化で余力が出てきた一般廃棄物用焼却炉の効率化をはかるのがねらいだ▼自治体側は、これまで一般廃棄物の処理施設で産業廃棄物を焼却すると、国から受けた建設費の一部を返還しなければならなかったが、環境省はこの制度を産廃の量が消却能力の半分以下であることを条件に4月から廃止するという。つまり、消却能力の半分以下であれば産業廃棄物を焼却しても補助金を返還しなくてもいいというのである▼焼却する産廃の種類は自治体の判断に委ねられるが、木くずや廃プラスチック、汚泥など焼却・埋め立てに支障のないものに限られる。処理は有料で、自治体側と産廃収集運送業者らとの協議で決める▼厚木、愛川、清川の3市町村で進めるごみ処理広域化の一部事務組合が、この4月から正式にスタートする。平成24年の稼働に向け、長時間、高熱で燃焼できる最新型の大型炉と最終処分場を建設するという大型プロジェクトだ▼行政側はこれまでの説明会で「一般廃棄物が対象で産業廃棄物は対象外」という答弁を繰り返してきたが、「本当にそうか」と疑問を抱く市民は多い。これまで市町村固有の事務事業だったごみ処理問題は、ダイオキシン規制以降、消却施設の大型化と広域化が進み、国や県が乗り出すという中央集権化が進んでいる。今回の環境省方針もその一環で「やっぱり」という感じだ。一般廃棄物の消却炉に産業廃棄物が押し寄せてくるのである。その先に見えているのが民営化であることは疑いない。一部事務組合である「厚木愛甲環境施設組合」が、今後、国や県からの通達をどうさばくか。そして産廃をどう取り扱うか注目していきたい。

 ゴミ集積所の移動(2003.10.15)

 相模原市が9月末からJR淵野辺駅北口地区で、一般ごみの夜間個別収集を開始した。これまでどこの自治体でもゴミ出しは早朝が常識だったが、それを夜にして混雑する駅前での歩行者の安全と美観を守るのがねらいだという▼最近のごみ出しのマナーはひどい。住民のモラルの低下とともに、収集日や時間外にも平気でごみを出してまちを汚くしている。中には夜中に地区外の人たちが車で持ち込んでゴミを捨てていくという不心得者も後を絶たない▼相模原市が夜間収集に踏み切ったのは、こういうゴミ出しの乱れと事業系ゴミの一般集積所への投棄を防ぐのが目的だ。個別収集にして集積所を廃止すれば、時間内に出せないゴミはその家に残るだけで、事業系ゴミも混入することがない▼東京のある下町では、固定したごみ集積所がなく、しかもゴミ集積所が日によって移動するという。町内会の人がその日の朝、「集積所」と書いた看板を自宅の前に出すまで、その日の集積所の場所が分からないのである。時間が来ると集積所は閉鎖され、次回は別の家の前が集積所になるという仕組みである▼固定したごみ集積所には、大きな入れ物があるため、決められた日や時間を無視してどうしてもゴミを捨てやすくさせる。きれいな街づくりのため、厚木市や自治会もゴミ集積所を無くしたり固定させない方法というのを考えてみてはどうかと思う。


 ごみ処理広域化計画(2002.09.01)

 厚木・愛川・清川の3市町村が進めている「ごみ処理広域化計画」に疑問を投げかけている人たちに話を聞いた▼広域化はガス化溶融炉のような大規模な焼却炉を必要とする。だが、その安全性はまったく立証されておらずまだ実験段階だ。それにオペレーションが難しく原発並みのコントロールが必要とされる。コスト削減にはつながらない▼新型炉はあらゆるごみを分別せずに、800から900度以上の高温で燃やすことができるため、逆にごみの大幅増につながる。いずれは産業廃棄物も押し寄せてくる▼県下のごみ処理広域化に問題をなげかけているジャーナリストの山本節子さんは「市町村のゴミ行政が、何の根拠法も持たない厚生省の課長通達という文書によって進められているのは、地方自治法違反だ」(『ゴミ処理広域化計画―地方分権と行政の民営化』・築地書館)という。広域化により市町村が有するごみの自治権が失われ、市民の監視の目が届かなくなる。計画にはコストやリスクアセスメントがまったく見られない▼行政側に聞くと次のような答えが返ってきた。「3市町村は県の広域化計画が策定される以前から研究会を発足させ検討してきた。通達によるものではない。ごみ処理行政の一部(中間処理)を3市町村が共同で行うという認識で、法律に外れた行為ではない▼市町村が共同で行うことによって、資源化が推進しやすくなる。施設の選定や場所についてはまだ議論の俎上に上っていない。一部事務組合は構成団体と情報を共有できる部分が多い。一般廃棄物が対象で、産業廃棄物は対象外である」▼広域化には問題があり、まだまだ議論が必要だ。行政には「初めに広域化あり」という姿勢だけが先行しているように思える。市民が求めているのは、徹底したごみ減量と資源化、市民の声を生かした「脱焼却型の一般廃棄物処理計画」だろう。

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