インタビューに答える山口巌雄厚木市長(厚木市役所市長室で)

2004.1.1新春インタビュー

 山口巖雄厚木市長に聞く

市制50周年に向けて

 あけましておめでとうございます。平成12年4月の地方分権一括法の施行以来、地方自治体は分権時代にふさわしい市町村のあり方を模索・実施しています。いうまでもなく、地方分権とは地域の自己決定権と自己責任を拡充することにあります。厚木市は平成17年2月に市制施行50周年を迎えますが、分権時代にふさわしい「厚木らしさの創造」「個性あるまちぢくり」にどう取り組んでいかれるのか、「あつぎハートプラン」の重点施策を中心に山口市長にお聞きしました。聞き手は山本陽輝編集長。

  市立病院について ■昨年4月に厚木市立病院がスタートして9ヶ月が経過しました。病院事業について取り組んでこられたこと、また今後の取り組みについてお聞かせ下さい。
 
山口市長 市立病院につきましては、「市民の生命と健康を守る拠点」として、地域の医療機関や保健・福祉施設との連携を図り、急性期を中心とした二次医療や高度医療の提供に努めるとともに、市民の皆様からのニーズに応えるため、「小児救急医療の充実」、「女性総合外来の設置」、「超高速CTの導入」に取り組みました。市民の皆様から、「市立病院になって良かった」と感謝の言葉とともに、医療環境や職員の対応について高い評価をいただいております。
 今後、地域医療との連携をさらに強化するため、休日夜間の一次救急を担う「メジカルセンター」を病院敷地内に移転する準備を進めるとともに、患者の皆様の待ち時間解消に向け「オーダリングシステム」の開発に取り組んでまいります。
 また、来年度の予算といたしましては、病院事業への一般会計負担分として、今年度と同額の13億7千万円程度を予定しております。
 
まちづくり条例について ■昨年10月「厚木市まちづくり条例」が施行されました。施行後の市民の反応を行政がどう受け止めておられるか、お聞かせ下さい。
 
山口市長 厚木市まちづくり条例につきましては、条例施行以降、目指すまちづくりについて、市民の皆様に徐々に浸透してきているものと考えております。
 特に、環境のまちづくり条例につきましては、一部の施設や地域において、空き缶のポイ捨てや歩行喫煙、たばこの吸い殻などが目に見えて少なくなってきたという効果も現れています。
 今後においても、1人でも多くの市民の皆様に、この条例に対して関心を持っていただき、ご理解を深めていただくよう、「広報あつぎ」への掲載などあらゆる機会を捉えて周知に努めてまいります。
 また、本市は昼夜間人口比率が116.6%であり、通勤通学で厚木市においでになる方が多く、人口22万人が昼間は26万人にもなります。この方々も厚木市に入られた時点でお守りいただく条例でもございますので、本厚木駅と愛甲石田駅の駅頭で、2回づつ、13,000部を「あつぎホットニュース」として配布しましたが、今後も状況を見ながら同様な対応をしてまいりたいと考えております。
 
ミニ公募債について ■厚木市は今年初めて住民参加型ミニ市場公募債「まなび債」を発行します。今後もこうしたやり方を導入していくお考えはありますか?
 
山口市長 「厚木まなび債」については、高齢者福祉対策でもございまして、60歳以上の市民の大切なお金の運用を少しでも応援しようとする施策でございます。厚木のまちづくりに貴重な資金を活用させていただこうとするもので、今回発行の公募債からの資金については、厚木市南毛利学習支援センターと北小学校給食調理場の建設費の一部として充当させていただく予定でございます。
 現在、2月25日の発行に向け準備を進めておりまして、多くの皆様からご応募をいただけるものと期待しております。今後におきましては、高齢者福祉の観点から、市民の皆様の評価を伺った上で、さらに継続していく必要があると判断した場合は、考えてまいる所存でございます。
 
ごみ処理広域化について ■厚木、愛川、清川の3市町村は、ごみ処理広域化のため一部事務組合を設立、4月から共同処理に向けた業務がスタートします。今後、消却施設や最終処分場など建設にあたっての場所の選定などが具体的検討事項になってまいりますが、建設場所の選定にはどう取り組んでいかれますか。また一部事務組合は議会も管理者も直接選挙で選ばれないため、住民とのかかわりが薄くなり、構成する団体の住民意思が反映されないという指摘もありますが、これにはどう対応していかれますか。
 
山口市長 広域ごみ処理施設の配置につきましては、厚木市にごみ焼却場等の中間処理施設を、また、清川村に最終処分場を設置することとし、次期の最終処分場につきましては、愛川町に設置していくことといたしております。施設の建設用地の選定に当たっては、施設を受け持つ厚木市・清川村の意向を十分に尊重し、厚木愛甲環境施設組合と関係市町村が一体となって、慎重に進めていく必要があるものと考えております。
 特に、最終処分場については、先行的に取り組む必要がありますので、清川村の広域ごみ処理に向けた考えを受け止め、村民の皆様が不安を抱かれることのないよう十分に配慮してまいります。このことは、次期の最終処分場を受け持っていただく愛川町の町民の皆様にも同様のことでございますし、当然のことながら、焼却場など中間処理施設を受け持つ厚木市民の皆様に対しましても、生活環境の保全や健康への配慮など意を注いでまいりたいと考えております。このように、安全性を第一に考えた施設整備に向けて、3市町村と組合が連携して努力をしてまいる所存でございます。
 次に、一部事務組合に関する事項でございますが、市町村住民から信頼される組合事業の運営を図るため、現在のところ県下のごみ処理を行う組合では制定されておりませんが、厚木愛甲環境施設組合として情報公開条例を制定するとともに機関紙の発行や広報・ミニコミ紙の活用、ホームページの開設などで情報提供に努めてまいります。今後、策定してまいります各種計画の策定段階におきましても、住民説明会等を開催するなど、住民の皆様の御意見を計画に反映してまいりたいと考えております。
 また、議会につきましては、市町村の議会ということよりも、ごみ処理という特化したことのみを取り扱うことになり、内容の濃い議論が交わされることになります。さらに、構成市町村の住民の方々にも御参加をいただける新たな組織も設置していく必要があるものと考えており、開かれた組合運営に努めてまいりますので、ご心配されております、一部事務組合にすると住民とのかかわりが薄くなるということはございません。
 
安心・安全のまちづくりについて ■犯罪が増加する厚木市といわれていますが、「安心・安全のまちづくり」についてお聞かせ下さい。   
 
山口市長 治安に関して取り組むべきことは、安心安全なまちづくり、犯罪の発生しない・しにくい環境づくりに尽きると思っております。
 市内で認知される刑法犯の発生件数は、年間約8000件でございますが、幸いにも、昨年は、平成14年より約500件減少しております。このことは、市民の皆様が身の周りから犯罪を無くそうとする強い意思と行動のあらわれと考えておりますが、依然として、空き巣や車上狙い、ひったくりなど身近な街頭犯罪は後をたちません。
 市では、市民総ぐるみで防犯運動を展開するため、各地区安心安全なまち会議の組織化を始め、防犯キャンペーンや民間防犯監視所の設置、防犯灯の照度アップや街頭緊急通報装置の設置などに取り組んでおります。また、市のホームページやケータイSOSネットなどにより、市民の方々の犯罪防止活動を支援するため、犯罪情報の提供にも努めております。
 このほかにも、市民安全パトロール車を2台配置し、市内を巡回しておりますし、
セーフティーベストと言いまして、昼夜間ともに目立つ色のベストを3000着作成したのですが、公募に応じていただいた市民の方にジョギングや散歩の時などに着ていただいて、防犯を呼び掛けることにより、市民総ぐるみで防犯に取り組んでいる姿勢を見せ、犯罪の抑止に役立てたいと考えています。今後におきましても、犯罪の発生しにくい環境の整備とともに、「犯罪を許さない!市民の目」をスローガンに、このネットワークを市民一人ひとりに広め、治安回復を推進してまいります。
 交通安全対策については、市内の交通事故は平成14年と比べ減少の傾向にありますが、まだまだ厳しい状況でありますので、今後も、なお一層、交通ルールの遵守、マナーアップの徹底を図り、事故撲滅に向けて運動を進める必要があります。
 また、放置自転車対策につきましては、一昨年には、中町1丁目臨時自転車等駐車場をオープンさせました。1800台収容可能ですので、これにより本厚木駅周辺の放置自転車は半減しておりますが、安易な路上駐輪が目立つことも事実です。したがいまして、「自転車の路上放置はしない」ということを、粘り強く市民の皆様に訴えてまいりたいと考えておりますが、駅周辺は自転車が元々多いことに加え、自転車盗も多発する状況もありますので、解消策としては、郊外部における「サイクルアンドバスライド」を今後も積極的に進める必要があると考えております。
 
ITのまちづくりについて ■厚木市が取り組んでいる「ITのまちづくり」について、市民の活用度とその成果、今後の取り組みをお聞かせ下さい。
 
山口市長 市民も参加してまとめていただいた「厚木市IT基本戦略」やあつぎハートプランに基づいて、『ITのまちづくり』を進めているところですが、昨年12月には、一層の情報化推進に向け「ITのまちあつぎアクションプラン50」をまとめました。
 平成17年2月、市制施行50周年を迎えますが、アクションプランに掲げる50のIT施策を実施し、皆様がITの利便性を実感できる行政サービスを実行し、電子市役所としての一歩を踏み出したいと考えております。
 IT施策はアクションプランに掲げており、例えば、携帯電話のインターネット
サービスについては、携帯電話の携帯性や即時性などの特性を生かし、医療機関情報やスポーツ施設予約などの情報を提供しており、すでに、約42000回の利用があり、市民の皆様に定着しつつある情報ツールとなっています。
 また、無線LANについては、実証実験として、平成14年11月から平成15年3月までの5ケ月間でしたが、モニター300人の皆様にご利用していただき、先進的な技術、環境を体験していただきました。他市に先駆けて導入することにより、市民生活、経済活動の中でITの生かし方を実体験することができました。無線LANは、公民館のIT講習や公共施設の開放型パソコンで活用しており、民間でも、なかちょう大通り商店街が約700メートルを利用可能にしておりますので、今後も、活用できるよう検討を進めたいと考えております。
 次は、メールマガジンですが、昨年7月からは防災行政無線の内容を「あつぎメールマガジン」として、11月からは防犯、防災などの緊急情報を「ケータイSOSネット」として電子メールでお知らせしています。すでに、700人以上の方が登録し、生活に密着した情報を提供しているところでございます。
 今年の6月からは、新たに公共施設等予約システムを稼動する予定で、街頭型端末機もさらに簡単で使いやすい新型に入れ替える予定です。
 
厚木らしさの創造について ■地方分権は厚木らしさの創造、個性あるまちづくりの創造にあります。厚木市は平成14年度から「個性あるまちづくり提案制度」を設け、14年度は「玉川の土手5kmを市民参加でサクラ並木に」が大賞に選ばれています。こうした提案制度を実現する手だては進んでいるのでしょうか?
 
山口市長 個性あるまちづくり提案制度につきましては、「市民が主役」の市政のさらなる充実を図り、地域の特性を生かしたまちづくりを一層推進するため、市民の皆様が望むまちの姿をご提案いただき、そのアイディアを市政に反映させようと創設した制度でございます。
 入賞したアイディアにつきましては、その実現に向けて鋭意努力しておりまして、地域の大学の研究成果などをインターネットで公開する、というような提案に基づいて具体化しているものもありますが、法規制などにより、実現していない提案もあります。いずれにいたしましても、制度の趣旨を踏まえ、市民の皆様からのアイディアにつきましては、他の事業の一部に活用させていただくほか、政策検討の中で、その考え方を取り入れてまいりたいと考えております。
 
教育改革について ■厚木市が取り組んでいる教育改革についてお聞かせください。
 
山口市長 平成14年度の完全学校週5日制の導入など、教育を取り巻く環境が大きく変化している中で、教育委員会において、市民の皆様からのご意見を基に、時代に対応した教育の在り方を検討し、あつぎらしい教育を推進するための教育改革に取り組んでいます。
 あつぎハートプランの目標の一つであります「生涯学習のまちづくり」の実現に向けては、”まちづくりは、人づくり“との認識に立ち、21世紀を担う子どもたちが、主体的に伸び伸びと、力強く生き抜く力を備えることができる環境づくりが必要であると考えております。
 そのためには、教育委員会を始め教育関係者自らの熱意と努力が大切であることは言うまでもありませんが、時代を担う子どもたちを見守る保護者の皆様との連携とともに、地域の皆様のご理解とご協力が必要不可欠であると思います。
 一昨年から「子育てホットフリートーク」と銘打って、若いお母さま方と市長との懇談会を各地区に出向きまして実施しておりますが、このような事業は大変意義深いものと考えておりまして、市長といたしましても、市民の皆様のご協力をいただきながら、学校、家庭、地域の絆を大事にした教育活動が展開できるよう積極的に支援してまいりたいと考えております。
 
第3セクターについて ■第3セクター厚木テレコムパークの経営改善について、行政がやるべきことがありましたら具体的な手だてをお聞かせ下さい。
 
山口市長 東名厚木インターチェンジ周辺地区は、業務核都市基本構想において、業務核都市の業務機能集積拠点として位置づけられています。その中で厚木テレコムタウン構想は、東京一極集中の是正と地域振興を目的とし、この地区を情報通信基盤として整備し、新しいまちづくりを目指すものです。
 そして、第三セクターである株式会社厚木テレコムパークは、このプロジェクトの先導役として中心的な役割を担うため、多くの地権者のご協力を得て、国・県・市、関係事業者、金融機関等が共同で立ち上げスタートいたしました。
 会社の経営状況につきましては、現在、テナント入居もほぼ満床の状態となっており、少しづつではありますが経営収支の改善が図られてきてはおりますが、バブル崩壊後の急激な社会経済情勢の変化という波に抗しきれず、依然として厳しい状況下にあります。
 会社としては、経営の健全化を図るため、経営改善計画骨子案により、関係機関と協議調整を進めてきているところであり、市といたしましても、現在、行政の枠組みの中で協力できることを検討しているところでございます。
 また、現在、市では、隣接するアミューズメント地区の早期事業化を図るべく調査、研究をしておりますので、今後、同地区の整備を見据えたなかで、会社が都市管理や情報通信等への事業参画ができるような環境づくりを進めてまいりたいと考えております。
 
市制施行50周年について ■平成17年2月1日、厚木市は市制施行50周年を迎え、翌年の1月31日までさまざまな記念事業に取り組まれます。今年はその事業計画をまとめる年でもありますが、具体的事業についてお聞かせ下さい。
 
山口市長 市制50周年記念事業につきましては、市民の皆さんからいただいた50周年を祝う事業の提案や、市が50周年を契機に実施しようとする事業の提案をもとに、市民組織であります厚木市制50周年記念事業の検討懇話会、市民推進委員会、そして記念事業の実施主体となります実行委員会において、さまざまなご意見を頂戴しながら検討を重ねております。また、市といたしましても、庁内検討組織を設置し検討を重ねております。こうして各方面からご意見をいただくことにより、記念事業の基本理念や基本方針に基づき、厚木らしさとぬくもりを市民の皆様お一人お一人に感じていただける記念事業を計画することができるものと確信しております。
 現在のところ、市制施行日に当たる平成17年2月1日には、厚木中央公園をメイン会場としてオープニングのイベントを、そして2月5日の土曜日には、文化会館で記念式典を、翌6日には記念講演会の開催を予定しております。また、市民の皆様の企画・運営による「市民ステージ」を実施する計画、厚木にゆかりのある人物、厚木の今と昔の姿を捉えた写真、絵画などによる「50周年記念特別展示」なども予定しております。
 市制50周年を多くの市民の皆様とお祝いするとともに、これからの50年に向け、夢と希望にあふれたスタートを市民の皆様と手を取り合い、しっかりとした絆のもとに新たな一歩を踏み出してまいります。
 ■今年もよい年であることを期待いたしております。本日はありがとうございました。