第558号(2001.01.01)

新春インタビュー

山口巖雄厚木市長に聞く

21世紀は都市の自立の時代

 あけましておめでとうございます。21世紀の幕が開けました。「21世紀は都市の自立の時代」といわれています。魅力的な都市、個性的な都市が発展する一方で、既存工業地の衰退や中心市街地の郊外化、インナーシテイ問題が深刻化、市町村合併も促進されるものと思われます。そうした中で長寿少子化、IT化、生活価値化、グローバル化、資源制約化などの対応は自治体にとっても待ったなしの状態にあります。21世紀のスタートの年にあたり、山口巌雄市長にめざすべき市政の舵取りについておたずねしました。(聞き手は山本陽輝編集長)

IT・ハイウエー・ハーモニカの街づくり

20万都市で行政サービス第3位
 ■まず最初に昨年を振り返って、市民に誇れるものがありましたらお聞かせください。
 山口市長 昨年四月に「ぼうさいの丘公園」がオープンしました。防災対策を充実させるとともに市民の憩いの場として利用していただき大変喜んでいただいております。この「ぼうさいの丘公園」が日本公園緑地協会主催の第16回都市公園コンクール公園設計部門において「日本公園緑地協会長賞」をいただきました。とても名誉なことでこれは市民とともに誇れるものだと思っております。
 2つ目は昨年11月に財政状況を資産と負債で表したバランスシートの公表です。市民1人当たりの正味資産は124万5千円、市民1人当たりの負債は39万3千円という結果が出ました。厚木市の資産が他市町村と比較して、より多く形成されたということは、豊かな自主財源に支えられた積極的な都市基盤整備の結果であると判断しています。これは市民の皆様に誇れる内容ではないかと思っております。
 同時に財政再建も急テンポで進んでおり、公約に掲げました負債(借金)の削減に関しましては、平成7年度末に747億円あった地方債の額が、平成11年度には658億円となり、約89億円の削減を果たすことができました。財政再建・行政改革はブレーキを踏んだりアクセルを踏んだりしながら、市民の皆様とハンドルをしっかり握っていかなければなりませんので、今後も引き続き努力してまいりたいと考えております。
 3つ目は日本経済新聞が行った全国671市と23区の行政サービス水準評価の中で、厚木市が1位の府中市、2位の宝塚市に次いで第3位の評価をいただいたことです。これは
特別養護老人ホームの数、学校にあるパソコンの台数、図書館の蔵書数、ゴミ処理費用など様々な行政サービスを数値で示されたもので、20万都市の中で第3位にランクされたということは、財政再建を進めている一方で、市民サービスは決して低下していないということの証明にもなり、市民の皆様にご安心いただけるものと思っております。
 また、厚木市の名誉市民である和田傳先生の生誕100年を記念した行事を市民とともにお祝いすることができたことも大変嬉しいことの一つでした。

事務事業の見直し-本年は改革実施の年
 ■厚木市は昨年を「平成の改革の年」と位置づけ、すべての事務事業の総点検を行いました。市民に新たな負担をお願いするものもありますが……。
 山口市長 事務事業の見直しについては、明確な目的の設定と評価による効果的な行政運営を目指し、目的が達成されているかどうかを確認・反省することを職員に徹底し、現実的な見直しの成果と合わせて職員の意識改革を推進するために実施したものです。
 実施にあたっては、「改めるもの」「残すべきもの」「全く新たにつくるもの」の3つの視点から、従来の慣習にとらわれることなくゼロベースからの出発とし、事務事業1,421件の総点検を実施いたしました。この結果、283件の見直しをすることになり、本年を改革実施の最初の年と位置づけ、順次条例、規則などの改正などを進めながら効果的な行政運営を目指してまいります。 
 ご指摘の受益者負担について見直すべき事業(使用料などの値上げ)は15件ございますが、これはあくまで受益者として応分の負担をお願いするものでありまして、他の市民の皆様との公平性を確保するために見直しを行ったものでございます。なお、ご負担をお願いするものとは別に、市民の皆様に還元できる事業も多くございますので、ご理解をいただきたいと思います。

トライアングル政策で事業推進
 ■山口市長は2001年をどのように位置づけておられますでしょうか。
 山口市長 新たな世紀の幕開けとなる2001年は、あつぎハートプランの将来都市像であります「私もつくる心輝く躍動のまちあつぎ―住んで良かったまち、住んでみたいまち」を目指して、3大政策であります交通渋滞の解消、防災対策、高齢者等の福祉施策をはじめ、環境、教育面の施策を積極的に推進してまいります。
 また、情報化の進展を踏まえた「ITのまち」、平成19年度を目途に整備される四つの高規格幹線道路などのインターチェンジを有機的に機能させる「ハイウエーのまち」、さらには2002年に本市で開催されますアジア太平洋ハーモニカ大会を目指した「ハーモニカのまち」の三つのまちづくりにも積極的に取り組み、1つの事業で3つ以上の効果をあげる「トライアングル」政策を推進してまいりますとともに、県立厚木病院の受け入れを視野に入れた「医療福祉のまち」づくりにも取り組んでまいります。

インタビューに答える山口市長

新税の創設b新年度はなし
 ■東京都や神奈川県などで地方の独自課税の動きが出ています。厚木市は「法定外普通税」と「目的税」の創設を検討しておられるようですが、どのような新税をお考えでしょうか。
 山口市長 新税につきましては創設の可能性についての検討を担当部署に指示しておりますが、新年度から導入することは考えておりません。その前に昨年とりまとめました事務事業の見直しと徹底した歳出の削減を実行すべきであり、肥大化した行政のスリム化に最大限努力することが肝要と思っております。それでもなお将来的に財源が不足するようなことがあれば、導入をお願いすることも考えられますが、その場合は国・県との二重課税は避け、公平で市民の理解が得られやすい生活環境の保全など、政策課題解決のための新税が適当であろうかと考えております。

県立厚木病院問題b政策医療としての位置づけも
 ■県立厚木病院の移譲の問題は、財政面や運営面など大きな課題があると思われますが、市民医療の拠点として市が受け持つ役割は大変大きなものがあろうかと思います。今後の取り組みについてお聞かせください。
 山口市長 昨年春に県が「地域医療検討協議会」の報告を受けて第3者機関へ移譲するという方針を決定されました。厚木市としては病院利用者の70%が市民であること、民間に移譲された場合、1年から1年半の閉鎖などで入院患者、通院患者に不安が生ずることが予想されること、また小児科、産婦人科、救急医療等不採算部分の切り捨てなども考えられることから、市民が安心して良質な医療サービスを受けられる環境の確保のため、移譲を受けることを前提に、県との協議を進めてまいります。財政面での移譲時の負担や後年度負担などの諸課題も多く、細部にわたった協議を進めてまいりたいと考えております。
 先ほど申しました「医療福祉のまちづくり」は、この県立病院も視野に入れたもので、総合計画の一つの柱ともなっております。本市は幸い財政状況もよく、市民の健康を守るという視点から、県立病院問題は「政策医療」という位置づけを考えていく必要もあるのではないかと思っております。今後、有識者や市民の皆様による検討委員会を早急に立ち上げ、今年度中に第1回の会議を持ちたいと考えております。

ITなど情報に乗り遅れない施策を
 ■産業空洞化と地場産業の衰退、長期不況などにより、地域経済が深刻の度合いを増しています。21世紀という新たな世紀のスタートに際して、市はどのような地域産業政策をお考えでしょうか。
 山口市長 地域産業の振興につきましては、本厚木駅周辺地域を本市の商業拠点と位置づけ、まちとしての賑わいや魅力を高めるため、昨年「中心市街地活性化基本計画」を策定しました。この計画は、行政が中心となって進める市街地の整備改善と商業者主体で進めていただく商業活性化事業を一体的に推進する計画です。現在、商工会議所が中心になりまして、商業者や市民の皆様のご意見をお聞きしながら、実施主体となるタウンマネージメント機構(TMO)設立への合意形成につとめているところでございます。
 また、今年は21世紀を展望した産業振興計画を作成する予定で、昨年から市内企業の実態調査を行い、計画策定の基礎データをとりまとめているところです。21世紀はITの時代といわれ、産業の発展も今までとはまったく異なるスピードで進歩していくものと思われます。情報が瞬時に伝わる時代に乗り遅れないような振興策を展開していくことが必要で、厚木市の未来が大きく展望できる産業振興ビジョンをお示しできるものと思います。
 また、中小企業の活力を高めるため、人材育成、新技術・新製品開発、経営相談、また事業資金や設備資金などの貸付け融資を行っておりますが、ものづくり・中小企業が産業の原点との視点に立ち、支援策の充実につとめてまいりたいと考えております。

厚木テレコムパークb債務超過回避の見通し
 ■第3セクター厚木テレコムパークが、債務超過になることが懸念されております。株主としてまた、テレコムタウンの政策責任者として、今後市がとるべき道は何だとお考えでしょうか。
 山口市長 株式会社厚木テレコムパークの厳しい経営状況の打開策につきましては、これまで会社と主要株主で構成いたします経営対策協議会を中心として検討がなされ、支出の削減と収入拡大の両面で可能なものから実施をしているところでございます。今年度につきましても債務超過には陥らない見通しです。
 株式会社厚木テレコムパークは、情報通信拠点形成の先導役としての期待と役割が与えられており、今後も21世紀のまちづくりという視点に立ち、経営の安定化に向けて関係者の皆様とともにさらに努力を続けてまいりたいと存じます。

業務核都市の首長会議を厚木市で開催
 ■特例市や業務核都市への対応についてはどうお考えでしょうか。
 山口市長 地方分権一括法の施行により厚木市は都市計画や許認可などの分野ではかなりの移譲を受けております。今後は平成14年に特例市への仲間入りをしながら、大気汚染や騒音など環境面での分野に取り組んでいく必要があろうかと思います。業務核都市につきましては、今年、首都圏にあります業務核都市の首長会議が厚木市で開かれるとうかがっており、素晴らしい会議となるよう市としても支援してまいりたいと考えております。

ボランティア国際年b市民の公益活動支援
 ■2001年は国連の定めた「ボランティア国際年」
にあたります。NPOやボランティアなど市民の公益活動をどのような分野に活用していかれますか。
 山口市長 ここ数年、災害救援のためのボランティア活動やNPO法の施行を機に、社会的にNPOやボランティアに対する関心が高まってまいりました。すでに把握しているだけで百近くのボランティアやNPO団体があります。それぞれの皆さんがそれぞれの分野で精力的に活動されており、特に福祉の分野では大変大きな存在となっております。 
 本市では平成10年4月、ボランティアサポート室を設置し、このような活動をされている皆さんの作業や打ち合わせができる場、情報の提供、人材育成などのための講座、相談などを実施して側面から支援をさせていただいております。
 今後ともこれらの支援をさらに充実させるとともに、公益活動を活発化させるため、第一段として平成13年度からマルチメディアや環境など八部門について、ボランティアの皆様に積極的な活躍をお願いしたいと考えております

相模川右岸堤防道路b当面の進め方で協議
 ■相模川右岸堤防道路の建設問題が市民の賛否両論にあい、事業計画が暗礁に乗り上げています。市はこれをどう打開し、解決の糸口を見つけていかれますでしょうか。

インタビューする山本編集長

 山口市長 相模川右岸堤防道路につきましては、昭和59年当時、相模大堰の建設計画が出された段階から、地元の皆様から整備要望をいただき、その後、この要望を受けて、地域における交通の分散化や住環境の改善などの面から事業計画を作成、地域の皆様と協議を重ねてまいりました。 
 しかし、現在の新橋建設の進捗状況や堤防道路計画に対する地域の皆様のご意見などから状況を判断いたしますと、当面の進め方といたしましては、すでに完成しております取水堰管理橋を利用した自転車・歩行者専用通路として通勤、通学者などの利便性を図ることや、東名高速道路北側の堤防道路を整備して、周辺住環境整備が早期に図られるよう関係機関との協議を始めたところであります。
 なお、東名高速道路南側から玉川までの間は、都市計画道路社家岡田線の事業化の見通しがついた段階で、改めて検討してまいりたいと考えております。
 今後は、この「当面の進め方」に対してのご意見をいただきながら、引き続き関係機関と協議を進め、早期に地域環境に合った快適な道路づくりができるよう努力してまいりたいと考えております。

相模川や市街地に住むホームレス対策は
 ■厚木市には相模川の河原や市街地などに180人にものぼるホームレスが存在しているといわれています。ホームレス対策はどのようにお考えでしょうか。
 山口市長 昨年3月、県が行った実態調査では県央地区には実数で190人が確認され、うち7割弱の130人が厚木市で確認されています。特に本市に多い理由としては中心市街地に隣接して河川敷が広がっており、野宿生活がしやすいといった点があげられると思います。また最近の市内公共施設での人数は、公園や地下道を主に約50人との報告を受けており、市民の皆様からもさまざまな課題が提起され、大変苦慮しているところです。
 最近、生活保護制度の運用にかかわる国の柔軟な考え方が示されてきましたので、より適切な生活保護制度の適用や市救急医療対策事業による医療費の給付、必要に応じて保健婦による健康相談などを行っております。
 今後は1月から3月にかけまして、県が聞き取り調査を実施いたしますので、より詳細な実態が浮かび上がってまいると思います。そうした実態を把握した上で、ホームレス問題県・市町村連絡会議で議論をしていただき、広域的な視点から取り組んでまいりたいと考えております。

毎年箱根駅伝を応援にまいります
 ■山口市長はお正月の箱根駅伝には、毎年欠かさず応援にかけつけるとうかがっておりますがc。
 山口市長 毎年3日の朝6時ごろ、復路のスタートになる芦ノ湖畔まででかけています。大学時代に選手として走った経験もあり、箱根駅伝は先輩や旧友とお逢いして旧交を温める場ともなっております。大学時代は1年の時、平塚から戸塚まで走りましたが、これが区間3位となり、ちょっとした英雄になりました。3年の時は鶴見から戸塚を順天堂大学の沢木選手と一緒に走って、私が沢木選手に勝った経験があります。4年の時はキャプテンを仰せつかっており、戸塚から鶴見の区間を走りましたが、大ブレーキで失敗をいたしました。そのときの苦しさ、悔しさが人生の大きな修業になりバネとなりました。ですからスポーツから学ぶものというものは大変大きなものがあります。
 ■今年のご活躍を期待しております、本日はどうもありがとうございました。

山口和泉のコンピュータ占い

2001年はどんな年になるだろう?

協調と調和の心が試される年

暦の上では辛巳八白土星(かのとみはっぱくどせい)です。この八白土星という星は、変化、相続、中止、蓄積、改革、転化などの複雑・微妙な現象を表す意味を持っています。
 今年の一年間は、八白土星という星がはたらき、私たちの生活や社会情勢、天候などにいろいろな影響を与えてくれるのです。
 新しい出発を意味する八白土星…「不動」「蓄財」「小より大をなす」といった安定的な意味を持ちますが、反面、山崩れの土砂が一瞬のうちに麓に殺到するような、荒々しい猪突性をも秘めています。このため、「静から動」「陰から陽」へと急激に変化する意味もあり、新しい出発や物事の節目を表しているのです。
 景気好転望めずb政界に大きな変化
 経済面では、対外経済関係の不調が懸念され、経済再生を図る中で、設備投資や個人消費は伸び悩み、リストラの継続に雇用不安は拭えず、政策如何で先に日本の崩壊が危惧される。景気は弱く好転浮上は望めず、企業の合併などが話題となり、好転の兆しはあるがいまだ熟さず、相変わらず不況と判断する。
 国内政治は不安に包まれており、不快な状態が長く続きます。また、政局の混乱はせっかくの上昇気運の足を引っ張り、不況脱出も難しくなります。
 自民党は派閥の綱引きに終始し、内向きの状態となり、頼りになりません。民主党は党内のキシミが顕著となり、難しい局面を迎えそうです。公明党は世渡り上手をいかんなく発揮、共産党は時運到来ですが、一般大衆受けがよくありません。このため、民間の危機意識は極限に達し、政官界の刷新が強く求められます。まずは政界から大きな動きが出そうです。
 東北・北海道に地震b白やプラチナ流行
 今年は地球の温暖化とともに、適度の雨量も得られ、台風も平年並みではあるものの、細長い国土のため天災による被害は四季を通して局地的かつ突発的にあり、航空・船舶・交通機関に細かい心くばりを要します。
 地震は2月、3月、11月、12月に関東、東北、北海道地方に起こる可能性がありますが、震度四内外の地震です。
 今年流行するものは、色でいえば白や上品に輝くプラチナのようなもの、形でいえばシンプルで素直なものが流行しそうです。より人間らしく、自然を意識し、それでいて品のある落ち着いたものが流行の先端となりましょう。
 友好の輪を広げb友達づくりが財産
 今年は各国とも経済の向上を最優先させるため、協調の年となるでしょう。各個人間の対人関係も八白土星の意味を反映し、和気あいあいとした楽しいものになっていきます。こういう時こそ友好の輪を広げ、多くの友達をつくることが将来の財産となります。  
 他方、実直さが裏目に出て、強情、頑固、欲張り、ケチなどになる傾向もありますので、常に自分と相手の位置関係を確認、反省することが大切です。これがかえってお互いの潤滑油として働き、さらに深いつきあいができるようになります。つまり、今年は協調と調和の心が本物かどうかの試練の年となりそうです。
 国際化の時、外国から日本にどんどん外国人が来ますが、ことばや習慣の違いだけで閉鎖的になることなく、実直、温厚さをもって外国人とも気軽におつきあいしたいものです。明るい家庭生活のもと、1年という貴い時間が、あなたにとって悔いのないものでありますよう奮闘努力されることをお祈りします。(日本易学協会認定師範一級鑑定士)



箱根駅伝

初出場で初のシード権獲得を目指す
国学院大学陸競技部部長・総監督 

大森俊夫さん

 「大学創立118年目の悲願。飛び抜けたスター選手はいないが、総合力がうちの強みです。前評判をくつがえし、これまで例のない初出場初のシード権獲得で新風を吹き込みたい」
 1月2日、3日に行われる「第77回東京箱根間往復駅伝」に初出場する国学院大学陸上競技部の部長・総監督をつとめる。
 文化系のイメージが強かった同大学の陸上競技部が力をつけてきたのは、平成8年、院友会による「学術・スポーツ振興資金」がスタートしてからだ。2年後に柔道、野球とともに特別強化部会に指定され、関東選手権リーグ1部昇格と箱根駅伝が陸上競技部の2大目標となった。
 過去3回の予選会では16位、13位と着実に順位を上げ、昨年10月、立川市の昭和記念公園で行なわれた予選会で、出場30校中総合3位に入賞、大学創立以来初の本大会出場を決めた。
「昨年の予選会や全日本選考会では、僅かなミスで出場権を逃すなど勝負の厳しさを学んできました。失敗を成功につなげることが私の指導方針の一つであり、OBたちが引き継ぎ残してきた財産です」
 3年前に、川崎市多摩区中野島にある陸上競技部の「走根寮」が出来るまで、厚木市旭町の自宅に「大森寮」を建て、夫人とともに選手の食事、健康や生活面での面倒をみてきた。現在は「走根寮」に単身赴任、選手や森田桂監督、コーチと寝食を共にしながら24時間指導に取り組み、練習だけでなく、生活するすべてが競技につながる環境づくりに腐心している。
 陸上競技を始めて40年。県立横須賀高校から横浜国大に進み、東京学芸大学大学院修了。昭和45年の1600メートルリレー日本選手権で優勝、48年から国学院大学の教鞭に立つ。平成元年から2期8年、厚木市の教育委員をつとめた。
 初出場を決めてから大学では、応援に関する動画を用いた新しいシステムのホームページを臨時に開設、選手の肉声による自己紹介、沿道マップ、応援ポイントなどを詳細に掲載、大学・院友あげての応援体制を敷いている。
「神道学科の卒業生が全国に大勢いて、各地の神社から必勝祈願のお札をたくさんいただきました。長距離なので選手は精神的に勝つことが大事です。その意味では沿道の応援が本当に大きな支えになります。」
 大会本番では役員カーに分乗して選手を激励する。(http://www.kokugakuin.com)

丹沢からササが消えていく


スズタケ群落の保全と増殖に着手

自然環境保全センタ

 丹沢山地で林床を広くおおっていたササの一種「スズタケ」が、1980年代から東丹沢を中心に急速に衰退している。
 スズタケは地下茎により森林土壌を保持し、水源涵養上重要な働きをする植物。衰退により土壌浸食などの森林被害が懸念されるとともに、県が進めている「水源の森づくり」上でも問題になっている。
 衰退の原因としてはニホンジカによる採食の影響、茎に多数の分岐が発生して天狗の巣のような病状が現れるテング巣病の蔓延、一斉開花結実による影響が考えられている。

 厚木市七沢の県立自然環境保全センター研究部では、平成5年から8年まで丹沢のブナ林内において、丹沢大山自然環境総合調査を行ってきたが、それ以後も継続してニホンジカを防ぐ植生保護柵の調査に取り組んで来た。
 その結果、対象区と比較して植生保護柵内では、スズタケの植生が大きく回復するとともに、衰退の主な原因がニホンジカによる冬季の食糧であることが明らかになった。さらにかつてスズタケ群落であったところは、柵の設置により植生の回復効果が種類、量ともに高いことが判明した。これは退行したところでもスズタケの歪化した個体が残っていたことと、埋土種子(土中で発芽する能力を持ったまま休眠している種子)が多く、他の植物が回復したためと推定されている。
 同センターではさらに衰退形態について調査を進めた結果、衰退が進んだところでは健全な個体の20分の1ほどに歪化し、細かく枝分かれして木の根本など、シカの採食を受けにくいところでかろうじて生育していたという。また、地上部を採食されたスズタケは、本来エネルギーを蓄える地下茎がわずか約2ミリ程度しかなく、地下茎の枝分かれが少ない性質のため、ニホンジカの被食に対して極めて弱いことが明らかになった。
 また、丹沢産地での遺伝子の多様性について調査した結果、一地域につき5〜6型程度の遺伝変異が認められ、一地域の狭い範囲でのみ生育する遺伝型がある一方で、丹沢各地域に広域的に広く分布する遺伝型があることもわかった。
 同センターでは現在、丹沢に広域的にある遺伝型を持つ個体を用いて、スズタケの増殖に着手しており、今後遺伝子のバランスを壊さない形で植栽も実施していく考えだ。

厚木の観光いちご狩り

今年も1月上旬から始まる

 厚木市内のいちご栽培農家で、今年も1月上旬から食べ放題の「いちご狩り」が始まる。
 同市内のいちご農家は26戸で、栽培面積は約2.5ヘクタール。このうちの10戸が平成元年に「厚木観光いちご狩り組合」(清田正組合長)を組織、毎年シーズンになるといちご狩りを行なっている。いちご狩りの栽培面積は約1.3ヘクタール。今年は成育がやや遅れ気味だが、甘くて味のよいいちごが期待できるという。
 厚木のいちごは直売やいちご狩りが中心で、12月から1月の贈答シーズンや、1月から3月までのいちご狩りがもっとも忙しい季節。いちご狩りは同市妻田東の鈴木農園、戸田の清田いちご園ほか7カ所で5月上旬まで楽しめる。
 品種は「女峰」や「鬼怒甘(きぬあま)」「章捻(あきひめ)」で、もぎたてのいちごがその場で楽しめるほか、お土産用にも販売している。最近では消費者に好まれる甘くて大きい品種の改良が進んでおり「章姫」や「さちのか」に人気が集まっている。
 清田組合長は、「今年もつぶが大きく甘いいちごが提供できそう」と準備に追われている。いちご狩りの入園料は、30分食べ放題・ミルク付で大人1人1500円、5歳未満700円、2月から3月が大人1200円、5歳未満600円、4月から5月が大人1000円、5歳未満500円となっている。
 問い合わせはJAあつぎ営農部農産課1221・2273番。またはJAあつぎイベント情報サービスTEL223・0111番へ。

障害児の放課後支援とレスパイトケア 

母親たちがネットワーク

厚木でも活動本格化へ―4月スタートに向け準備 

まずは拠点となる場所探し

厚木さくらんぼの会

 障害児が家庭や学校以外の場で、年齢を越えた交流の場を持ち、将来の社会参加や自立に向けた子どもたちの活動を支援しよう―障害児を持つ親の集まりである厚木さくらんぼの会(内川由喜子代表)が、今年の四月から本格的な障害児の放課後支援とレスパイトケア(家族の休養)事業をスタートさせるため、活動の拠点となる場所探しに取り組んでいる。
 同会は平成9年11月、障害児を持つ母親たちが集まって、「子どもたちに年齢を越えた交流の場を提供し、同じ悩みを持つ母親たちが情報交換しながら仲間づくりをしよう」と発足した。会員は自閉症や視覚障害、肢体不自由、知的障害など小中学生の児童を持つ母親たち55名。会発足のきっかけは、特殊学級や養護学校に通っている子どもたちが、夏休みに気軽に行ける場所がなかったことだ。「親同士の交流も持ちたい」と養護学校1年の子どもを持つ内川由喜子さんが仲間に呼びかけた。
 「子どもにとって適当な療育施設や病院を見つけるまで随分と時間がかかった」「同じような悩みを抱えるお母さん同士で話し合う機会がなかった」「すべてが自分1人で手探りだった」など様々な声が聞かれ、自分たちでネットワークを作ろうということになった。
 活動は月1回集まっての情報交換と親睦のほか、遠足や親子レクリェーション、クリスマス会、トランポリン教室、音楽療法、広報紙の作成など。特にトランポリンは子どもの感覚総合トレーニングに効果があるため、昨年9月、県トランポリン協会の永田敏雄理事長に指導者として来てもらい、週1回荻野運動公園と睦合北公民館で行っている。また、音楽療法も介護福祉士の資格を持つ関守栄子さんを講師に迎え、月1回南毛利公民館を会場にリトミックや楽器演奏などに取り組んでいる。
 だが、活動場所が公共施設であるため、子どもたちが放課後自由に集まって交流できない、介護者の負担を軽くするデイケアなどができないなど、まだまだ多くの悩みがある。
 厚木市では現在、市の補助対象事業として市内13の拠点で学童保育が行われており、障害児についても市内の4クラブで4人の児童を受け入れている。だが、受け入れは小学校4年まで(特例として5年)で、親の就労条件のほか、障害の種類や程度によっては健常児の中で遊ぶには無理な子どもたちもいる。
 こうした中で出てきたのがレスパイトサービス事業だ。海老名市、伊勢原市、秦野市ではすでに数年前よりこの事業に取り組んでおり、相模原市では手をつなぐ育成会が運営する二十四時間ケアの「もみの木ホーム」など、市から年間600万円の補助金と月額20万円の家賃補助を受け、本格的な活動を行っている団体もある。
 厚木市でも昨年から年間120万円の補助がつくレスパイトサービス事業をスタートさせた。現在、同市飯山の学童保育ワーカーズコレクティブ「くれよん」と、荻野で障害者を介護する人のためのレスパイトを行なう「ほっとぽっと」で障害児の一時ケアを受け入れている。
 内川さんたちは、「24時間レスパイトできる独自の活動場所をつくろう」と、昨年末から本格的な活動の拠点づくりを始めた。これと平行して昨年10月、社会福祉医療事業団基金事業部に助成金の交付を申請、今年の4月、185万円の助成金を受けることが決まった。これまでの事業以外に施設見学と研修会、利用者の送迎などが新たな事業として加わる。
 「まずは場所を確保することが先決です。一軒家などどなたか格安で貸していただける方がいましたらぜひご協力をお願いします。また、子どもたちにかかわっていただけるボランティアも求めています」と話す内川さん。スタートすると厚木では障害児を持つ親が運営する初めてのレスパイト事業となる。連絡は代表の内川由喜子さんへ。TEL224・0780番。
(写真はトランポリン教室でトレーニングに励む厚木さくらんぼの会の子どもたち)

七沢バイパスが開通


地元観光に好影響

県道伊勢原津久井線

 主要地方道伊勢原津久井線の「七沢バイパス」が完成、12月17日開通式が行われた。同バイパスは上谷戸沢をまたぐ89.2メートルの七沢大橋を含む延長900メートル、幅員12メートルの県道。通称「宮ヶ瀬レイクライン」として、伊勢原市から宮ヶ瀬湖を経て、津久井町を結ぶ東丹沢の観光道路となっている。沿道は豊かな自然と七沢・広沢寺温泉、七沢城趾など名所旧跡も多い。
 しかし、七沢地区の現道は急カーブや幅員が狭い上、歩道のないところが多く、周辺住民や観光客の交通に不便を来していた。総事業費は23億円、平成4年度から工事が行われていた。
 開通式は17日午前10時から、七沢地区自治会連絡協議会、伊勢原津久井線建設改良促進協議会、七沢観光協会、玉川商栄会が主催した。式典には山口巖雄厚木市長、山口静雄清川村長、地元県議らが出席、テープカットやくす玉割り、親柱除幕式、記念植樹、渡り初めなどが行われ、午後3時から一般車両の通行が開始された。開通により地元から七沢温泉や宮ヶ瀬ダムなどに訪れる観光客の集客に、好影響を及ぼすものと期待されている。

今年のスギ花粉

県西部中心にやや多い

自然環境保全センターが調査

 厚木市七沢の神奈川県自然環境保全センターでは、スギ花粉症対策の試みとして、平成九年度より県内スギ林の雄花の着花量調査を実施しているが、今年春の花粉量は大豊作であった昨年春を下回るものの、依然として多くの着花量が予想され、特に県西部を中心にやや多く、比較的多い飛散が予想されるという。
 調査は県北部から西部の森林地帯を中心に、見通しのよいスギ林30か所を選んで、花粉を出すスギの雄花の着花状況を調べた。
 スギは2月から4月にかけて花粉を飛散するが、花粉飛散前年の7月ごろから雄花の形成を開始し、10月ごろにはツボミを形成する。このため、そのつぼみの着生状況を調査することにより、来年春の花粉の飛散量の推定が可能となる。
 調査方法は双眼鏡でスギの着花状況を1本ごとに3(木全体に着花が多い)、2(全体に多いか部分的に多い)、1(着花が認められるが少ない)、0(着花が認められない)の4段階に分け、それぞれ100から0点に点数化して集計する。
 自然環境保全センターが昨年11月から12月に行なった調査結果では、55.5点と大豊作であった一昨年の調査(平成12年春に飛散)と比較して減少したものの、不作年であった平成10年春の調査(11年春飛散)を大幅に上回っており、今年もやや豊作が予想されるという。
 地域的には県北部(津久井郡ほか六か所)が38.7点と比較的低いの比べて、県西部(南足柄市、小田原市ほか7か所)が77.1点で、大豊作であった一昨年よりも高くなっており、県北部が少なくて西部ほど着花が多い傾向が認められた。
 一般にスギの雄花の着花は、花粉飛散前年の夏の気候条件との相関関係が高いとされている。全国的には気象条件から西日本では多いと予想されており、県内でも同様の減少が起きているという。
 同センター研究部では、スギ花粉の報提提供と合わせ花粉症対策として花粉の少ないスギやヒノキの品種の選抜を進めている。