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          |  | 東名厚木病院
            泌尿器科医師  
            宇都宮 拓治 |   前立腺は男性にある臓器で、膀胱の下部に尿道を取り囲むようにして存在しています。この臓器は精液の一部を作っており、30歳後半頃より肥大結節が発生すると言われています。その後、加齢と共に肥大して行き(全ての方が肥大するわけではないです)、尿道閉塞症状や膀胱機能障害などをおこし、排尿困難などの症状を示すものを前立腺肥大症と言います。
 前立腺肥大の成因については、まだその全てが解明されていませんが、その一つに男性ホルモンの関与が示唆されています。
 症状
 (1)排尿後、尿が残っているような感じがある。
 (2)排尿後、またすぐに排尿しに行く。
 (3)排尿途中に、尿が途切れてしまう。
 (4)尿意を感じてから我慢することがつらい。
 (5)尿の勢いが弱い。
 (6)排尿開始時にいきむ必要がある。
 (7)就寝してから朝起きるまでの間、何度も排尿のために起きる。
 以上の自覚症状を点数化し、前立腺肥大症の重症度を評価するものが国際前立腺症状スコアーと言います。7項目の症状の合計点または突出した症状項目の有無をみて、治療選択の参考としています。
 質問
 (1)排尿後、尿がまだ残っている感じがありますか?
 0・1・2・3・4・5
 (2)排尿後、2時間以内に排尿することがありますか?
 0・1・2・3・4・5
 (3)排尿途中で、尿が途切れることがありますか?
 0・1・2・3・4・5
 (4)尿意を我慢できないで漏らした、又はトイレに急行することがありますか?
 0・1・2・3・4・5
 (5)排尿の勢いが弱いと感じることがありますか?
 0・1・2・3・4・5
 (6)排尿時、力まないと排尿できないことがありますか?
 0・1・2・3・4・5
 (7)就寝してから朝起きるまで、何回排尿のために起きますか?
 0回・1回・2回・3回・4回・5回
 なし…0点、5回に1回未満…1点、2回に1回未満…2点、2回に1回…3点、2回に1回以上…4点、ほとんど毎回…5点。
 上記7つの質問の合計点が0〜7点軽症、8〜19点中等症、20〜35点重症と判断致します。
 合併症
 ◆残尿:充分に排尿できず、膀胱内に尿が残ってしまう状態です。そのため、すぐに膀胱が尿で一杯になり、頻尿や1回尿量の減少を認めます。
 ◆尿路感染症:残尿が存在することにより、尿路感染症を繰り返します。膀胱炎症状や、時に腎盂腎炎まで発展し高熱を伴うことがあります。
 ◆尿閉:排尿しようとしても出ない状態です。ある種の薬剤(感冒薬、抗不整脈薬、トランキライザーなど)は、排尿困難を引き起こします。また、長時間排尿を我慢することにより膀胱壁が過伸展してしまい(特に飲酒時)膀胱が尿を押し出す力を失い尿閉になることがあります。
 ◆膀胱結石:血尿、膀胱炎症状、排尿中突然尿が途絶してしまうことがあります。これは、慢性的な尿路感染や、膀胱内の尿の停滞により引き起こされると考えられています。
 腎機能低下、水腎症:背部痛、食欲低下、浮腫などを認めます。高度な排尿障害が長期間存在し、膀胱内圧が慢性的に上昇することにより腎内圧も上昇し引き起こされると考えられています。
 ◆鼠径ヘルニア:排尿時に腹圧をかけてするため、引き起こされるものと考えられています。
 次回は前立腺肥大症の診断と治療方法について述べたいと思います.。
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