言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.32

たけのこ一本

 竹の子一本おくれ〜 未だ芽が出ないよ〜 竹の子一本おくれ〜 もう芽が出たよ〜 はじからどんどん抜いとくれ 
 杉の木、柿の木など原っぱやちょっとした地面のあるところに生えている木を見つけると、オヤがその木を背にして立ちます。子はしゃがんで親の足をつかみ、つかんだ子のお腹に手を回して次々とつながります。鬼が竹の子をもらいに来て上の歌で問答し、抜いとくれといわれたら抜き始めます。一人抜けたらもう一回始めから歌い始めて鬼だけが次の竹の子を抜くか、抜かれた竹の子の子も一緒に抜くかは、その時の遊び仲間の人数によります。
  戦前の家には廊下があり、部屋の仕切りには柱がありましたから雨の日は部屋で、柱を背にしても遊ぶことが出来ました。なぜ柱、または木が必要かといいますと、抜かれるときに引っ張られないように親は後ろ手で支えを握っている必要があったのです。しかし部屋でこの遊びが許されるのはせいぜい幼児。小学生になると体力もつき、昔の家は障子や襖があって、ちょっと乱暴にひっくり返れば障子の桟は折れるは、襖は破くは、大変なお小言をもらう羽目になります。お父さんやお兄さんが親になって、しっかりした足に小さい子どもたちが連なり、雨で外へ出られない憂さ晴らしを一時やった程度です。♪竹の子めえだした 花咲きゃ開いた はさみでちょんぎるぞ エッサエッサエッサッサ ♪ という歌もありますが、私はこれで遊んだことはありません。多分じゃんけんでしょう。竹は本当に成長が早いですね、吃驚します。
 最近私は投げ竹遊びの一種を復活させました。何処で知ったのか忘れてしまいましたが数年前、竹を細く割って歌に合わせてひっくり返したり、裏返したり、投げて受けたりする遊びがあることを知りました。友人にその話をしたら彼の家にあった古い孟宗竹でそれ風の竹を割ってきてくれました。何となく色々やってみたら出来たんです。嬉しかったですね。
 ♪一投げ 二投げ 三投げ 四投げ いつやのむすこさん なんでやっこらせ ここのおとんで 大阪見物 やっこらせ♪ という歌です。二番は一返し、三番は一切り。技がそれぞれ違っています。子どもたちも工夫して色々な技を開発します。でもそれをあちこちでやったら「子どもの頃にうんと遊んだ」という人が結構多かったのです。鳶尾にある「ひよこコミュニテイー」の塚田晶子先生は「うわあ〜懐かしい、小学生の頃学校に持っていってやりました。袋に竹をたくさん入れて、走るとカタカタ音がして。今でも袋の模様までおぼえてます」といわれました。竹の作り方は本によれば、竹を2cmくらいの幅で25cmくらいの長さ、とありますが、竹の太さや節の長さで変わるでしょう。使う子どもの年齢や手の大きさ、柔らかさによっても様々でしょう。ですから私の竹は千差万別です。そのほうが誰がどんな竹を選ぶかもわかって面白いです。また、座敷の畳の上で遊ぶための竹は別な作り方らしく、うんと薄く作って投げ上げて投げた手でつかみ何本取れたか競ったらしいのです。
 私が発見したもう一つの遊びは竹二本をかもめのくちばしに見立て、お手玉がかもめの餌です。私が投げるお手玉の取れた分がその日のかもめのご飯です。両手で竹を一本ずつ持つ子、お箸のように上手に持つ子、それぞれの発達段階によって工夫しています。偶然にしてもお手玉が取れたときの笑顔はホント嬉しそうです。大人もやると夢中です、やめたくない、もっとやりましょうという気持ちが伝わってきます。

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