言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.25

オニを飲んだ男の話

え・鈴木伸太朗
 節分で豆まきをしますが、何故だろう? といつも不思議に思っています。本を読んでも中々納得できる、というかスッキリする解説はありません、というより私の頭が悪いのが原因でしょう。分かっていることは昔は大晦日に厄払いの目的でやってたらしいということです。そうは言ってもオニが出てきて豆で追っ払うなどとは甚だ愉快なので私は好きです。
 暮れ頃から1月の終わり頃までの相応しいときに幼児たちに日本の昔話の「オニを飲んだ男の話」というのをするように心がけています。ご存知の方も多いと思います。絵本もあるらしい。ですから話し始めると「あ、知ってる、本で見た」という子もたまにいますが、私は「知ってる人は黙っててね」というとみんな静かに聴いてくれます。
  山郷のある道で男が蛙を呑んでしまう。男の胃袋の中で水かきのある足で蛙がペタペタペタペタ歩き回るもんで男は気持ち悪くて仕方がない。「どうしよう」とおかみさんに相談するとおかみさんは「お寺の和尚さんは物知りだから、和尚さんにお聞き」という。和尚さんにきくと和尚さんは「蛇を呑め」という。蛇の次に雉、その次に狩人、次に鬼と男は和尚さんの助言に従って次々に呑んでいきます。鬼を呑んでどうにもこうにもたまらなくなった男に和尚さんは最後に「豆を呑め」といいます。家に帰っておかみさんから豆を口に放り込んでもらおうとする寸前、男の口から鬼が「たすけてくれえ〜」といって飛びだして行き、お話は終わります。
 一年にたった1回だけ、それも運がよけりゃ聞く話です。話を聞く雰囲気になってないのに無理やりに話を聞かせようというわけにはいきませんからね。将来、誰かがこの話を節分のときに思い出してクスッと笑えればそれで良いと思っています。
 2月10日は初午です。♪お稲荷さんおはつ(初穂、神仏に捧げる金銭・食物)おぞうにて(お十二銅の転訛。江戸時代神仏へのお供え)お上げ お上げのだんから おっこって 赤いちんこ すりむいて 膏薬代 おオくれ おくれ♪ と歌いながら子どもたちが町内を歩き、何がしかのお駄賃をもらったようです。
 何がしかをくれた家の前では「ごうぎやごうぎ」と叫び、何も呉れない家の前では「けーちんぼ けーちんぼ」などとはやし立てたと記録にあります。しかし、もらったご祝儀は本来お稲荷さんへ奉納すべきものだったらしいのですが、子供の中のガキ大将が、自分たちの飲み食いに使ったりしだしたため、明治維新後急速に廃れたようです。
 こういう門付けのようなものは殆んど残っていませんね、ほら、函館だか小樽だかの七夕の門付けにしてもそうです。第一、子ども組のような組織もなくなったしねえ。稲荷神社に子どもたちが集まり、太鼓を打ち笛を吹き、狐の面をかぶって勝手に拍子をたたきながら歌ったり踊ったりc♪ スッテン テレツク 天狗の面 おかめに ひょっとこ 般若の面♪ などと歌ったらしいです。
そういう日々も流れていたであろう三田のお稲荷さんの鳥居を横目に見ながら私はいつも厚木に通います。初午の日に通りかかるというチャンスは今までになかったので、もしかしたら今も行われているのかもしれません。ホンと、スッテンテレツク 天狗の面 おかめに ひょっとこ 般若の面 なんて口ずさみながら運転してると調子良くなりますよ、交通事故には気をつけましょう!

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