言葉と精神の離乳食★わらべうた    by  文・大熊進子/え・鈴木伸太朗

NO.19

きれいな野菊

え・鈴木伸太朗
 何故かわかりませんが11月というと菊が思い浮かびます。菊といえば「きれいな花よ 菊の花 白や黄色の 菊の花」、または「遠い山から吹いてくる こ寒い風に揺れながら、けだかく清く におう花。きれいな野菊 うすむらさきよ」という歌が耳に聴こえます。特にあとのほうの石森延男さん(コタンの口笛の作者)の野菊は3番の「しもがおりてもまけないで 野原や山にむれて咲き、秋のなごりをおしむ花。あかるい野菊、うすむらさきよ」という歌詞が好きです。
 最近はガーデニングブームで花屋さんにはいつでも美しく咲き乱れる花々でいっぱいです。季節の花よりは名も知らぬハイカラな花が多い。でも町田や厚木を走り抜けるとき、ところどころの畑の隅に健気に咲いている、もしくは咲き残っている菊の花の美しさに私は惚れ惚れします。
 11月にデパートや催し場で菊人形展があります。9月、10月と秋祭りに神社の境内では菊の競い合い展覧会のようなものをよく見ました。懸崖の菊などは見事なものが多く見とれてしまいます。最近は出不精になったせいなのかまたは菊の花自体が流行らなくなったのか、以前ほど見かけなくなり、残念です。まあ私が菊を見ると綺麗だなとは一応思うのですが、この葉っぱ天麩羅にしたらうまかろう、この花びらは食用になるのかしら? などこっちの方向へ思考が動いてしまいます。
 とにかくそろそろ晩秋で、でも秋に違いは無く、秋といえば天高く馬肥ゆる秋です。お月見の歌を歌えばお団子やサトイモが出てくるし、とんびを見れば「一体どんな餌を探しているのかなあ?」と思います。『とんび とんび ひょうろひょろ 明日の天気は風が吹く』と歌った昔は、とんびが天空高く輪を描いて舞っていれば明日は風が吹くという天気予報の歌だったらしいのです。私と次元が違うのでちょっと恥ずかしい気もします。『朝の紅は大日のもと 晩の紅に川渡りすんな』というのも天気予報でしたが、確かに自然をよく観察していれば色々わかることが多い。ツバメが低く飛べば雨になるとか猫が顔を洗うと雨とか、なまずがどうかすると地震とかc。
 最近は世界的に異常気象ですが、冬将軍の気配を感じ出すと、肌を刺す風も朝晩の冷え込みも半端ではなくなります。大山を見たり、丹沢山塊を見ると「おおさむ こさむ 山から小僧が泣いてきた な〜んと言って 泣いてきた 寒いといって 泣いてきた」と歌った頃を思い出します。
 昔の暖房は火鉢と炬燵だけ。手や足にしもやけやあかぎれが出来、お風呂に入ると沁みました。みかんの汁がいいとか、うんとあかぎれになると何だか真っ黒いものを切れたところに埋め込んだ記憶があります。あれは何だったんだろう? でもあかぎれもしもやけも、今はあまりお目にかからなくなりました。
 そういえば大学時代、私は足がしもやけにかかったものです。武蔵小金井にあった校舎は戦争中の兵舎を使っていたため、隙間風ばかり。暖房は薪ストーブ。トイレは勿論汲み取り式で深くて、トイレに入ると下から風がスーツと吹いて風邪ひいちゃうので出来るだけ行かないようにしていました。若かったからダテの薄着でパンプス履いて通っていたので冬はいつも小指がかゆくなりました。卒業してからしばらくしもやけとも縁が切れていましたが、博多の主人の実家に冬帰るとしもやけになりました。アルミサッシュなど使われていない昔の屋敷で、夏向きに建っていたらしく、冬は寒かった。そうそう「しもやけおててがもうかゆい」(私の場合は足の指でしたが)を実感したわけです。

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