病気と健康

NO013(2003.01.01) 「シミ」治療の実際

  東名厚木病院形成外科 

大島 淑夫

  前回に引き続き、今回はシミの治療の実際についてお話ししたいと思います。
 
シミ治療の実際
 基本的に、朝と就寝前の1日2回、前述のレチノイン酸(トレチノイン)とヒドロキノン(ハイドロキノン)という2種類のクリームを、シミの上に順番に重ねて塗っていただきます。
 実際には、洗顔の後、化粧水で十分に水分を与えた後、レチノイン酸の黄色いクリームを綿棒などで薄く塗り、少し乾かした後、ヒドロキノンの白いクリームを上から重ねて少し広い範囲に塗っていただきます。
 朝はその上から日焼け止めクリームを塗っていただいた後に、お化粧も可能です。夜は、日焼け止めやお化粧の代わりに、上からオイルを塗っていただき、皮膚の乾燥を防ぎます。
 
治療の経過 
 治療は、前半の漂白期間(bleaching phase、2〜6週間)と、後半の炎症を冷ましてゆく期間(healing phase、2〜6週間)に分かれます。
 治療を開始してから通常2、3日で、皮膚が赤くなり、ぼろぼろと垢のように皮膚が剥けてきます。徐々に赤みが増しますが、シミ自体はだんだんと薄くなってゆきます(bleaching phase)。その間、ややしみる感じ、ピリピリとした感じがありますが、1、2週間経つうちにだんだん肌が慣れて和らいできます。
 シミがある程度取れて薄くなった段階で、レチノイン酸(黄色いクリーム)の使用を中止し、後半の炎症を冷ましてゆく段階へ移行します(healing phase)。ヒドロキノン(白いクリーム)のみ使用し、徐々に炎症を冷ましてゆきます。
 通常治療を開始してから、早ければ2週間、長い方で4〜6週間でhealing phaseへ移行できます。一連の治療期間の目安としては8〜12週です。
 シミの種類によっては、2回目の治療を必要とする場合もありますが、その場合は1、2ヶ月の間をおいてから再開します。
 
通院 
 2週間に1回程度の通院が必要です。薬に対する反応には非常に個人差があり、必要に応じてクリームの濃度を変更する必要があります。必ず決められた日に受診して下さい。
 また人によっては、お肌がクリームに敏感に反応する方もいらっしゃいますので、その場合には治療回数や種類を変更、中止する場合がありますので、早めに外来を受診してください。
 
最後に
 この治療の効果は国内外の学会でも広く認められており、治療法としてもある程度確立し、安定した効果が得られるようになってきています。
 しかしながら日本では保険治療としてはまだ認められておりませんし、また使用するクリームも医薬品としては認可されていないため、基本的に自由診療(自費治療)となります。
 使用するクリームは非常に不安定で長期の保存が効きませんが、当科では、当院の薬剤部にて製剤したものを使用しておりますので、安全で安定した治療効果が得られております。

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