病気と健康

NO10(2002.10.01) 脳卒中

  東名厚木病院 脳神経外科 

鬼塚圭一郎

 はじめに
 日本人の国民病とも言われた脳卒中は、脳神経外科医のみならず、脳卒中に携わる多くの人たちの努力により、死亡率こそ心臓病、癌についで第3位に低下しましたが、その入院患者数は癌の1・5倍、心臓病の3倍にも達しています。これを減少させるためには脳卒中の治療のみならず、予防に関する対策が重要な課題となっています。
 今回は「脳卒中」とはどういう病気なのか、これに対する現在の治療と予防について紹介いたします。
 
脳卒中とは
 脳の血管障害による病気の総称で、血管がつまる(脳梗塞)、破れる(脳出血、くも膜下出血など)ことにより症状が出ます。古代ギリシャでは、神の鉄拳(ストローク)で起こると考えていたようで、欧米では今でも脳卒中のことを「ストローク」と呼んでいます。多くは瞬間的に半身不随や言語障害などの症状が出ますが、すぐによくなったり程度が軽いということで、しばらく様子を見ることによって、手遅れになる場合があります。以下さらに詳しく説明していきます。
 
1. 脳梗塞
 脳の血管がつまることにより意識障害や半身不随となる病気です。最近ではミスチルの櫻井クンが小脳梗塞でツアーがキャンセルになるという記事が記憶に新しいところです。若いからと言って安心できません。血管がつまる原因はいろいろですが、動脈硬化によるもの、心臓病によるものが一般的です。まず原因をつきとめるため頭部CTスキャンやMRI、MRアンギオ、心電図、血液検査が行われます。太い血管がつまっていると判断されればすぐに脳血管撮影を行います。症状が出てすぐであれば血の塊を溶かしたり、砕いたりする治療が有効で、これによって劇的に症状がよくなることがあります。治療は点滴、内服薬などの薬物治療、高気圧酸素治療、リハビリテーションが行われます。同時に再発予防のため、薬物や食事指導を行い、場合によっては外科手術が必要になることもあります。
 
2. 脳内出血
 脳のなかに血が出れば、そこが壊されるとともに頭の内圧が上がり、意識障害が発生します。高血圧によるものが最も多く、その他動脈瘤、血管奇形などが原因です。最近は高血圧に対する知識、認識が広く浸透し、早期治療が行われるようになったため減少しています。出血の程度によっては生命の危険を伴うため、外科手術が必要になることがあります。急性期は血圧のコントロールを行い、薬物や高気圧酸素治療によって脳の腫れをとる治療が行われ、その後リハビリテーションによって機能回復が
行われます。
 
3.くも膜下出血
「ある日突然いままで経験したことのない激しい頭痛が起こった。」これがくも膜下出血の典型的な症状です。なかには突然意識がなくなり倒れてしまうこともあります。最も多い原因は脳動脈瘤(りゅう)からの突然の出血です。治療は手術による再出血予防と、遅れておこってくる脳血管攣縮(れんしゅく)による脳梗塞の予防です。社会復帰できるのは実に3人に1人の割合で、脳神経外科医が最も神経を使う病気の一つです。では予防はどのようにしたらよいのか?脳動脈瘤は成人で100人中5人位が持っていると報告されています。従来は脳血管撮影という入院の必要な検査で発見されていましたが、最近はMRアンギオという簡単な検査で発見されるようにもなっています。しかし仮に発見された場合、破れる前に治療(予防手術)するのかと言う点については、医師と本人、家族が充分検討する必要があります。
 
おわりに
 以上脳卒中につき簡単に解説いたしました。脳神経外科では脳卒中以外にもてんかん、脊髄疾患、パーキンソン病、痴呆症などを対象にしています。当院には高度先進医療器が揃っており、比較的待たずに検査が行える体制が整っています。

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