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 NO1(2002.1.1) インフルエンザについて 

東名厚木メディカルサテライト
総合健診センターセンター長

稲垣 敬三

 インフルエンザは、「流行性感冒」といわれるように、毎年冬期に流行する呼吸器感染症です。
 インフルエンザ流行の歴史的記述は、約500年前頃より認められますが、1918年に始まった”スペインかぜ(A/H1N1ソ連亜型)“は、その死者2,000万人ともいわれており、当時、日本でも40万人の犠牲者が出たといわれています。近年の本邦におけるインフルエンザの発病数は「インフルエンザ様疾患発生報告」で見ると、多い年では128万人、昨年は極めて少なく12万人で、例年の3分の1から5分の1でした。
 インフルエンザの名称の由来は、14-15世紀頃インフルエンザの流行が流れ星の影響(influence)と考えられていたことに発しています。ウィルスが分離同定されたのは、1933年で、その後A、B、C、H、Nなどの型に分類されました。
 インフルエンザの流行は、毎年11月頃から始まり、1、2月頃に最盛期となり、3月末には終焉します。また人に大きな流行を起こすのはA型インフルエンザウィルスですが、A型ウィルスは人以外に鳥、豚、馬など人獣共通伝染病であり、流行に「渡り鳥」がウィルスの運び屋になって関与していると考えられています。
 インフルエンザ(流行性感冒)といわゆるかぜ症候群(普通感冒)は、どう違うのか。いわゆるかぜ症候群は、ライノウィルスやコロナウィルスなどによって引き起こされる上気道の炎症であり、鼻水、くしゃみ、咳などが主で、発熱、頭痛や倦怠感などの全身症状は比較的軽いものを一括して名付けた総称です。かぜの約90〜95%を占めています。
 一方、インフルエンザは、発症が突然の高熱、激しい頭痛、全身の筋肉痛、関節痛、激しい全身倦怠感など全身症状が強く、やや遅れて気道の風邪症状が発症し、時に腹痛、嘔吐、下痢などの症状を伴うことがあります。また、症状は激しく、肺炎、脳炎、心筋炎、心外膜炎などの合併症を起こし、致命的となることがあります。しかし、合併症を起こさなければ症状は数日で軽快し、予後は良好です。なおインフルエンザ菌という細菌がありますが、これは以前インフルエンザの原因と間違われ付けられた名称で、別の病気の原因となるものです。
 診断は、咽頭からのウィルスの検出や血中抗体価の上昇によって行います。最近ウィルスの検出の簡易検査キットで診断できるようになりました。治療は、近年抗ウィルスが開発実用化されましたが、A型のみしか効かず、また発病から2日以内に使用しないと効果がなく、充分とはいえません。多くは対症療法が行われいるのが現状です。
 したがって、感染以前にワクチンで予防することが、インフルエンザに対抗する最も有効な方法です。ワクチン効果は、65歳以上の高齢者の研究報告で、45%の発病を抑え、80%の死亡を阻止したとしています。乳幼児、高齢者、重い病気のある方には、予防接種を積極的に行うことが必要です。近年、予防接種法の改正により公費の一部負担がなされるようになりました。ご利用下さい。
 なお予防の基本は、かぜ症候群と同じでうがいや手洗い励行、気道乾燥の防止、体調の調整など、気道感染予防です。お忘れなく。


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