厚木市長選挙 2007年1月28日執行

「解説」 大胆な改革の実行、マニフェストの作成と市の将来構想
 現職に大差をつけて当選した小林常良氏は、新市長として今後、市政の舵取りをどう行っていくのか。「多選は弊害がある」「現状を変えて欲しい」とする市民意識が大きな追い風となっただけに、小林氏の手腕がさっそくにも試される。
 小林氏が新市長としてがまず取り組まなければならないことは、山口市政の継続と大胆な見直し、選挙戦では示し得なかった「情報公開」「体感治安対策」「中心市街地の活性化対策」など11の重点政策についての数値目標や達成期限を明確にしたマニフェストの作成にある。
  「夜の厚木のまちは歩けない」「神奈川の歌舞伎町」と言われる中心市街地の治安・風俗対策、自転車の駐輪対策などは、緊急課題であるだばかりでなく、公約に掲げたかつての賑わい取り戻す中心市街地の活性化、元気な厚木をどう進めるのかと表裏一体の関係にある。小林氏は民間との信頼関係を築き、行政がグランドデザインを描いて先導的な役割を果たしたいとするが、過去幾度にわたって行われてきた中心市街地の活性化対策(構想)が、少しも実現してこなかったことを考えると、行政の強力なリーダーシップが問われてこよう。再開発による一点豪華主義ではなく、高齢化社会を念頭においた、行政や各商店街との連携を通してすべての機能を補完する商店街、その場所に来たらすべての人が用を足せるという「厚木版コンパクトシティ構想」をどう具現化できるかにある。商店会、商工会議所との協力関係をどう築くのかも課題だ。
 棚沢地区や周辺住民の反対にあって立ち往生している「ごみ中間処理施設」の建設候補地問題では、「候補地選定のプロセスの開示と民意との整合性を図る」(市民かわら版1月1日号のアンケート調査に対する回答)とする考え方を示しているが、これも小手先ではなく一端は白紙に戻し、ニュートラルな立場で選定問題を進めるのでなければ住民合意を得ることは出来ないだろう。
 山口市長が移転を打ち出していた市立病院の整備計画をどう見直すのか。小林氏は市街地の活性化対策として移転の考えがないことを明らかにしているが、この問題は病院機能の充実、医療の質の向上と合わせてじっくり考える必要があろう。
 渋滞箇所の立体化、都市計画道路の見直しなどを打ち出している交通渋滞の緩和策は、国道や県道との関わりがあるだけに時間がかかる問題でもある。高規格道路の完成だけを待つのではなく、高規格道路の2層化構想による相模川への新橋架設計画を大胆に打ち出すことも必要だ。特に交通渋滞対策は、緊急課題として就任後、直ちに着手するぐらいの気持で取り組まないと、実現が遠のくのは避けられない。
 このほか、平成20年度からスタートする「あつぎハートプラン基本計画パート2」の策定を念頭に置いた、ハートプランそのものの見直しと、中・長期の視点に立ったまちづくりの方向性、目指すべき将来都市像をどう描くのかも重要な課題だ。山口市長が打ち出していた市役所だけの「ITのまち」、民間の功績を横取りした「ハーモニカのまち」、市民生活とはかけ離れた「ハイウェイのまち」というまちづくり構想を抜本的に見直し、市民生活に密着し市民に期待感をもたせるまちづくり、厚木市の将来構想を柱にした「新総合計画」をどう打ち出すことができるかであろう。
 山口市政時代に続発した職員の不祥事を根絶し、「尸位素餐(しいそさん)」「不作為の罪(ふさくいのつみ)」を大量生産してきた市役所職員のやる気をどう引き出し、職員の意識改革を進めていくのかも大きな課題である。「庁内大改革」を公約に掲げる小林氏が、まず手をつけなければならないのは職員の執行体制、人事管理をどう作り変えていくかであろう。これは年功によらず適正な昇進試験を導入すること、人材の流動化に向け職員がFA宣言できる制度の導入(本紙アンケート調査の回答)をいかに実現できるかにある。
 また、「市民が主役」を掲げたものの、自治会長主役、後援会役員主役を進めてきた、山口市長とは異なる「市民が主役」を、どう打ち出せるかも、市民とともに歩む小林市政の試金石となろう。