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市民かわら版編集日記

(2001年11月)

内陸工業団地でゼロ・エミッション計画
 11月17日(土) 気分: 天候:
 厚木市と愛川町の神奈川県内陸工業団地協同組合(築井晃理事長・149社)で、産業廃棄物をゼロにする「ゼロ・エミッション計画」を策定するため、年度内にも調査に乗り出すことが明らかになった。地球環境の保全と廃棄物処理費用のコスト削減を目的としたもので、100社以上で構成する大型工業団地のゼロ・エミッション構想は全国でも初めてだという。
 ゼロ・エミッションとは企業活動で吐き出される産業廃棄物をゼロにするという考えである。たとえばA社の廃棄物がB社の原材料となり、そのB社の廃棄物がC社の原材料になるという考えで、こうした廃棄物と原材料の産業連鎖を無限に回転させることが出来れば、産業は廃棄部ゼロの状態で永遠に生産活動を継続することが出来る。1992年、国連大学の学長顧問であるグンター・パウリ氏が提唱、94年7月、国連大学で第1回ゼロエミッション研究会が開かれ、初めて概念と構想が明らかにされた。国内では95年11月に山梨県甲府市の国母工業団地(23社)でゼロ・エミッションがスタートしたのが第1号。
 内陸工業団地は厚木市と愛川町にまたがる県内最大規模の工業団地で1966年に発足、現在、工業系企業86社、流通系31社、その他32社で構成している。これらの企業や事業所からの廃棄物(木材、紙、廃プラスチック、金属類)は個別企業ごとに処理しているが、その処理費用は年間約3億2000万円。
 計画は処理業者を含めた委員会をつくり、処理の効率性や環境マネジメントシステムなどの研究を行い、実現に向けたプログラムを作成するほか、研究機関や行政などとも連携して、リサイクルシステムを構築していくという。(風見鶏1995年10月15日参照=http://www.kawara-ban.com/95kaze.html
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分権の手法「住民の住民による住民のための政治」
 11月20日(火) 気分: 天候:
 川崎市長に当選した法政大学教授の阿部孝夫氏は、初登庁に際して行われたセレモニーのあいさつで、アメリカの第6代大統領リンカーンの言葉「人民の人民による人民のための政治」をひいて、川崎のまちを創造していくのは民間の活力であり、市長はその活力を生む、市民活動の事務局長、市役所は事務局だと説いた。
 この通りのことを最近、海老名市が実践した。10月18日、同市国分3丁目に誕生した7,700平方メートルの「緑地やすらぎ公園」である。市はこの公園の整備にあたって、「利用者に親しまれるためには、地域住民と一緒につくるのが最良の方法」と、住民のアイディアを求めるワークショップ(討論会)を開いた。市にとっては初めての試みである。
 昨年7月から完成までに7回のワークショップを開いたところ、延べ134人の住民が参加したという。住民の間では「自然を残すべきである」「遊具のない公園では困る」など、様々な意見が出て調整に苦労したが、納得いくまで話し合った結果、遊具をできるだけ減らして、広い面積に何も置かない多目的広場を作ったほか、木立の中で子どもたちが遊べるよう樹林広場を整備、園路には木のチップを敷き詰めた。また、地形を活かして自然の高台にベンチを置いたが、イスの高さは夕陽の見やすさに配慮したという。
 市では「市役所だけでは出来ない発想が多かった」と話しており、住民たちも「思い通りの公園ができた」と満足しているという。まさに住民の住民による住民のための政治で、地方自治とは本来こういうスタイルをいうのだが、これまで行政はなかなかこうした手法をとってこなかった。
 今日いわれている地方分権とは、市役所主導でやる仕事を減らして、住民の創意で、まちづくりを実践して行くことを可能ならしめる行政システムと財源配分に仕組みを変えていくことである。どこの市町村もこうしたやり方には及び腰だ。それは既存の行政システムそのものが脅かされるのを恐れているからで、厚木市に代表されるように「市民が主役」といっても、自治会長だけに意見を聞くという形式的な市民参加を進めるだけで、どこの自治体でも事業の計画立案や入札などの執行手続きにまで市民の参加を促すという考えはない。
 こうした中で、川崎市の阿部市長が言う「市役所は事務局」「市長は市民活動の事務局長」という発想は、分権の時代に市民に新鮮な感覚を与えた。これは行政は裏方、サポート(支援)役、黒子役に徹するということを意味している。こうした分権の遂行は不可避的に行政システムの解体と改革をもたらす。阿部市長の言葉の中にどこまで市役所改革の意味が込められているか分からぬが、そうした改革をクリアした自治体のみが「分権国家」として生き残って行くのである。