病気と健康

NO16(2003.05.01) C型慢性肝炎とインターフェロン治療

  東名厚木病院 副院長 

山田 拓司

 はじめに
 C型慢性肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって生じます。血液を介することが殆どで、約50%は1989年以前の輸血が関係しています。残りは血液製剤や刺青、使い回しの自己注射などが関係していると考えられています。
これらの感染を契機に感染した人の60%から70%がC型慢性肝炎に進展することがわかっています。慢性肝炎には特有の症状は無く、採血して検査しないと肝障害やHCVの有無はわかりません。輸血歴のある人や血液製剤の治療を受けた既往のある方は血液検査を受けることが大切です。
 
HCV抗体について
 C型慢性肝炎の診断ですが、血液中にHCVがいるか否かは、まず採血し血中のHCV抗体を検査します。これが陰性であればHCVはいないと考えられます。陽性の場合は過去にHCVに汚染されたが現在は消失している場合と、実際にHCVに感染している場合とが有ります。HCV抗体価が高い場合はHCVが存在すると考えられますが、HCV抗体価が低い場合はHCV-RNA-PCRというHCVの一部を増幅してわかりやすくした特殊な検査をすることが大切です。HCV抗体が陽性であってもHCV-RNA-PCRが陰性であればHCVは血液中にはいないことになります。HCV-RNA-PCRが陽性であれば血液中にHCVがいることになります。
 
HCV-RNA-PCRについて
 HCV-RNA-PCRが陽性の場合には、次に血液中の肝臓の細胞由来であるAST(GOT)、ALT(GPT)などの血液検査が必要になります。これらが高値を示していると多くは慢性肝炎と考えられ、慢性肝炎の治療が必要となります。
 AST、ALTが正常のときはHCVが血液中にいても肝臓に障害を与えていない状態にあり、HCVを持っているという意味でHCVキャリアーと呼ばれ、3ヶ月に1回程度の経過観察で十分と考えられています。
 
インターフェロンについて
 本邦においてはインターフェロン(IFN)注射薬は2年から使用可能になりました。しかし、当初はC型慢性肝炎に対してHCVが血液中から消失する率は全体で20%くらいでした。
 その後、HCVには大きく2つのグループがあり、グループ1ではIFN治療によりHCVが消える率は10%くらいですが、HCVグループ2ではIFNによりHCVが血中から消失する率は70%位であることがわかってきました。
 また、血液中のHCVの量が多いとIFNの効果が乏しく、HCVの量が少ない場合にはIFNの効果があがることが判明しました。さらに、平成13年12月からは抗ウイルス剤(商品名:レベトール)の使用も可能となり、これまでIFNの効果が乏しかったグループ1でウイルス量の多い人でもIFNと抗ウイルス剤の併用によるHCV消失が20%にまでなりました。
 IFN治療によりHCVが血液中から消えるのが、1番良い効果ですが、ウイルスが消えなくてもIFN治療後に血液中のAST、ALTが低値の場合には慢性肝炎の進展が遅いこともわかってきました。
 現在では以前のIFN治療でHCVが消えなかった人でも2回目のIFN治療を受けることが出来るようになっています。
 
おわりに
C型慢性肝炎で悩まれている方は是非、INF治療について外来を受診し、説明を聞かれることをお勧めいします。又、患者の会などでIFN治療についての情報を提供しています。是非、利用なされることを望みます。

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