病気と健康

 NO23(2005.03.01) 関節鏡ってなぁに

       東名厚木病院
   スポーツ整形外科 夏山元伸      

  胃カメラは飲まれたことがある方も多いと思いますので、皆さんよくご存知でしょうが、それに似たもので関節のなかを見る関節鏡(関節のカメラ)というものがあります。
  胃の場合は口から飲めますので外来で局所麻酔でできますが、 関節の場合は皮膚に直接穴を開けますので数日間の入院を要し、もう少し大がかりな麻酔をします。
 関節鏡は太さ2〜4a、長さ10〜21bの筒状をしています。たばこの箱より小さなビデオカメラを接続してテレビモニターで画像を見ることができます。皮膚に5a位の小さな穴をあける為、痛くないように麻酔が必要です。また、関節鏡で見ながら手術を行う場合はもう1〜2箇所同様な穴をあけて専用の手術器械を挿入して行きます。
 さて、どういう時に関節鏡をする必要があるのでしょうか。関節が痛くて病院に行って最初に行う検査はレントゲン検査です。レントゲン検査は手軽に行え、骨に関する情報が得られます。レントゲン検査で異常がなくて、骨には異常がありませんといわれたことが有る方は多いと思います。
 骨以外にも関節は様々な組織でできています。膝の関節で説明しますが、骨の端には関節軟骨というすべすべした軟骨があります。軟骨と軟骨の間には半月板というクッションのような組織があり、中央には前十字靱帯という太い靱帯があり、膝の上下の骨と骨をつなげています。それらも骨と同等もしくはそれ以上に重要な組織ですが、レントゲンには写りません。ですから、関節の異常を疑って、それも骨以外の組織の異常を疑った時に関節鏡検査を考えます。
 また、関節に水や血が溜まった時も,その原因を確かめる為に関節鏡検査を考えます。関節鏡の便利なところは、診断だけでなく、治療も同時にできることです。
 胃カメラを見ながら胃のポリープを取ったり、腹腔鏡でお腹の中を見ながら胆嚢を取ったりするように、半月板にひびが入っていれば、ひびの部分を縫い合わせる、もしくは部分的に取り除くことができます。
 関節鼠といって関節のなかに小さな骨のかけらがあって、大きな骨の間に挟まっている場合も関節鏡で見ながら、骨のかけらを取り出すことができます。十字靱帯という太い靱帯が切れているときも関節鏡視下に靱帯を移植できますので、昔と違って盲腸の手術と同じくらいの小さな傷(約3b)で手術ができます。
 レントゲン以外では、MRIという便利な検査があります。軟部組織の状態を身体に侵襲を与えないで知ることができます。関節の場合も半月板や十字靱帯の損傷の状態を知ることができます。しかし、軟骨の状態や、中に水が溜まったときの炎症の状態を調べることは苦手です。関節鏡のように関節の中を直接視るわけではないので、関節鏡ほど確実な情報は得られません。また何といってもMRIは検査だけで治療効果はありません。
 一方、関節鏡は、直接間接の中を視るのですから確実な情報が得られ、治療も同時にできますが、小さいとはいっても関節に穴を開ける必要があり、数日とはいえども入院を要します。ですから、関節の異常を疑って、骨には異常が無い場合、特に半月板や靱帯などの損傷を疑ったときは、先ずMRI検査である程度の検討をつけて異常の可能性が高ければ、次に主に治療目的で関節鏡を行います。

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