風見鶏

1991.1.1〜1991.12.15

  絵のような写真(91・1・1) 

 新春対談に登場していただいた藤井秀樹さん(厚木市飯山)は、写真家というより写真作家といった方がピッタリする方だ。女性を撮らせたらもちろんピカ一であるが、藤井さんを作家たらしめているのは、創り出す作品の技法にある。
 写真というと、印画紙に焼き付けることだとばかり思っていたが、藤井さんのアトリエに伺って驚いたのは、写真を木や大理石、シルクなどに焼き付けていることだった。新液体乳剤を大理石や布にスプレーして乳剤粗粒子の画面を作成するのだそうだ。これに写真を焼き込んで彩色をほどこす。
 出来上がったものは写真というよりは、正に絵そのものである。実はこの技法が、藤井さんを藤井さんたらしめているゆえんでもあろう。
 作家はいつの時代でもパイオニアであるが、この技法をやるのは日本では藤井さんだけである。藤井さんは「写真と絵に境界はない。写真のような絵があるのだから、絵のような写真があってもいいではないか」という。
 その藤井さんの夢は、世界ではフランスにしかない広告写真美術館を日本で、できるならこの厚木でつくることだそうだ。藤井さんに逢ったら写真という世界が変わって見えるが、その発想とスケールの大きさには誰でも魅せられてしまう。

  男に問題?(91・1・15)

 厚木市の市民意識調査には興味深い自由回答が寄せられていて、設問の集計結果よりもズバリ的を射た意見もあり、つくづく考えさせられてしまう。その中からまず男性批判を拾ってみる。
「男の自立も必要。会社で立派な仕事が出来ても、家庭で奥様に世話をやいてもらっている男は魅力がない」「独身時代は親に甘え、結婚後は妻に甘える。そういう男を育てる親のことまで問題にすべきだ。世の男性を見ていると、結婚しない女性、離婚したい女性が増えるのは当然」
 同情意見もある。「現在の男性はちょっと可哀相。平日はよく働き、休日は家事と子育ての協力で、これ以上平等を唱えたらどうなるのだろうか。若いお母さんはとてもきれいだが、若いお父さんはくたびれているみたい」
 行政や社会については「現在の女性プラン推進委員会は、厚木で生まれ育った名士の奥様方の集まりだ」「市議会など女性がもっと政治に参加すべきで、自治会、PTAなども会長は男と決まっているところがあるが、もっと女性が進出すべきである」
 いちいちもっともだが、結婚しない女性、離婚したい女性が増えるのは困った現象だ。そういえば結婚できない男性が増えているという。やはり、男に問題があるのだろうか。

  12年ぶりの市長選(91・2・1) 

 12年ぶりに厚木市長選挙が行われる。足立原市長が初当選したのは昭和54年2月。公明、民社、新自ク、社民連推薦、社会の支持を受け20年に及ぶ長期保守市政を敗っての初当選だった。
 以後、同市長は2回連続無投票で3選を果している。2期目の時は1期目の選挙があまりにも激しかったため、有権者の間にもう選挙はこりごりという意識とやっと1期が終えたという認識とが一致して、対立候補が出なかった。
 3期目は自民党も推薦政党に加わるというオール与党化現象に支えられ、この時も対立候補が出なかった。与党の中には3期まではやらせるという暗黙の了解もあったという。
 今回、4期目にしてやっと対立候補が出た。しかし、自・社・公・民・連・ネット対共産という対決の図式である。結果を言うのは不謹慎だが、足立原市長の4選は固いだろう。
 問題は投票率が50%を大幅に下回った場合、そして得票数が7割を割った場合である。足立原丸に注意信号が灯るのは必至で、市政の舵取りもこれまでのように順風満帆というわけにはいくまい。 今回は信任投票の性格を持つとはいえ、有権者にとっては12年ぶりに与えられた1票である。棄権は何としても避けたい。
                                      

  与党の構造(91・2・15)

 足立原市長の政権基盤を支えているのは政党では自民、社会、公明、民社、社民連である。
 中でも与党中の与党であるのが、同市長を最初に選挙にかつぎ出した公明、民社、社民連、そして自民党河野派(旧新自ク)であろう。これに社会党と自民党亀井派が相乗りしているのが今日の図式である。
 しかも政権基盤の要となっているのが自民党県連幹事長をつとめる亀井氏だ。亀井氏が屋台骨を支えている限り、足立原政権はまず安泰といってもよい。逆に言えば自民党がキャスチングボードを握っているわけで、自民党の仕掛け次第では政権が大きく揺らぐことにもなりかねない。
 政権維持のポイントは自民党との関係をいかにして上手く保つかであろう。思わぬところで揺さぶりに合うかも知れないし、今後は他の政党の離反も考えられる。これは政権が長期化することの宿命でもあろう。今後、足立原市長はそうした政党の思惑を巧みにコントロールした政権維持を強いられに違いない。
 さしあたっては助役、収入役人事が待っている。順当な内部昇格でいくのか、または思い切って理事からの抜てきを考えるのか。4期目のスタートはここがポイントだ。
 もちろんこれは選挙をクリアしての話である。

  金の成る木(91・3・1)

 厚木市の平成3年度予算案が発表された。市民税や固定資産税を合わせた市税収入は、歳入全体の62.8%これに財産収入などを含めた自主財源比率は85.3%と、全国でもトップクラスの財政力を誇っている。
 ここ10年間、厚木市は8割方自前の財源で行財政をまかなってきた。それだけひもつき事業が少ないわけで、こうした傾向は今後もかなり続きそうである。また、同市には基金制度があって多額の金を積み立てている。例えば公共施設整備基金は約98億円、財政調整基金は約37億円で、そっくり手つかずの状態だ。いざという時にはこの基金の取り崩しも出来る。
 歳出面では人件費が17.1%で県下の自治体では1番低い。これに扶助費や公債費などを含めた義務的経費は27%と過去10年間で最低をランクしている。一方、投資的経費も35.8%と依然3割をキープ、財政の弾力度は極めて良好である。
 この財政基盤を築いたのは、いうまでもなく石井忠重前市長である。現在、足立原市長がこれを摘み取っているわけで、この果実を次の世代へどう生かすかが最大の腕の見せどころでもある。いつの時代でも種撒く人は必要だ。金の成る木はそうそうにはないのだから。

  1強3弱(91・3・15)

 「1強3弱」ということばがある。文字通り1人が強くて3人が弱いという意味だが、県議選でこの1強3弱ということばが意識的に、あるいはごく当たり前に用いられている。1強とは一体誰を指すのだろうか。それは各陣営によって異なっている。
 小沢陣営では大桃氏、山口陣営では小沢氏、そして大桃陣営と堀江陣営では山口氏である。小沢氏は過去の選挙実績、山口氏は人気度ナンバーワン、大桃氏は昨年の衆議院選挙で社会党が獲得した票から判断して、というのがそれぞれの理由である。逆にいうと3強1弱になるのか。なるほどと思える反面、戦略的に流しているという面もあるようだ。
 一方ではそれぞれにマイナス要素もある。小沢氏は6期目で長すぎるという点、山口氏はムードが先行しているという点、大桃氏は追い風がなく、争点に乏しいという点だ。自・社には都知事選での分裂や迷走劇も災いするかもしれない。この隙に乗じて返り咲きを狙うのが堀江氏である。前回落選した堀江氏は背水の陣でもう後がない。ただひたすら玉砕戦法のみであろう。
 1強3弱は多分に投票率に左右される1強3弱である。マイナス要素が出ればダンゴもありうるし、一波瀾もある。各陣営共頼みの綱は浮動票しかない。

  中2階の地方自治(91・4・1)

 統一地方選挙の県議選が告示された。厚木選挙区は3つの椅子をめぐって前職と元職が激しいしのぎをけずっている。しかし、有権者の反応はいま1つ盛り上がりに欠ける。
 というのは前回の売上税のような争点がなく、投票行動の判断材料に乏しいからだ。政策論争より候補者の政治力、人気度によって選挙が行われている。有権者の側から言わせると、県会議員といっても今1つ身近な感じがしないともいう。
 ゆりかごから墓場まで、市民生活全般にわたるのが行政の仕事であるが、国と地元という関係から判断すると、県が中間に位置することによって地方政治が2重構造になっている。
 平屋が市政、2階が国政とするならば、県政はさしずめ中2階といったところだろう。2階建ての家を建てても中2階を作る人は少ない。有権者の意識が希薄なのは、案外そうした点にあるのかも知れない。
 川崎や横浜などの政令指定都市になると、議員の序列は国会議員、市会議員、県会議員の順序だという。あいさつの順番や席順など、県会議員は市会議員の後塵を拝するのだそうだ。それだけやることがないのである。そう聞くと、政令都市に県会議員は不要なのではないかと思う。
 しかし、それはともかく、中2階とはいえ地域の問題を掲げてアピールするのが地方政治である。個人演説会や遊説カーで候補者が何を考え、何をやろうとしているかをじっくりと聞くことが大事だし、選挙広報を冷静な目で見ることも必要だろう。
 中2階にどんな梯子をかけるのか、政策抜きにして政治は成り立たない。候補者はもっと梯子の形や色を鮮明にして政策を訴えるべきであろう。

   自前の選挙(91・4・15)

 今回の県議選厚木選挙区はフタを開けてみると、「1強3弱」ではなく「3強1弱」だった。山口、小沢、堀江の保守3候補が猛烈に競り合うことによって、社会党の大桃氏がはじき飛ばされた恰好になった。
 これは投票率によっても裏付けられる。45.04%という県議選史上最低の投票率から判断すると、浮動層・無党派層はその大方が投票に行かなかったといって良い。つまり、大桃氏にとっては頼みの綱がゼロに等しかったのである。
 投票率が低いと、どれだけ基礎票をもっているかが、当落の大きなカギとなる。いって見れば、どれだけ自前かつ自力型の選挙をやれるかということだろう。自前の選挙は短期間でどうにかなるものではない。日頃の後援会活動が大きくものを言う。
 その意味では、山口氏は抜群の出来だった。小沢氏は自前型選挙の大先輩であるし、堀江氏も支援組織が軟弱とはいえやはり自前抜きには語れない。今回、堀江氏の選挙は、監督・コーチなしの迷走選挙で全員が玉砕型であった。しかし、これが「何としても返り咲きを」という同情票の獲得と同時に新たな保守票の堀り起こしにつながったのである。
 こう見えてくると、風が頼りの社会党ではいつになっても自前の選挙は出来ない。社会党に欠けているのは、選挙区での日常活動である。

  個店のリニューアル(91・5・1)

 厚木一番街通りにある東急ストアが、5月1日限りで閉店するという。これまで一番街のキーテナントだっただけに、店を閉めるとなると何となく寂しい気がする。
 本厚木駅周辺は、ここ1〜2年の間、大型店が相次いで閉店した。昨年5月には小杉会館、10月には忠実屋、そして今回の東急ストアである。現在、駅周辺にはミロードII、パルコ厚木店などの進出が決まっており、東急ストアなどの閉店は商戦激化の結果とみられているが、単純にそれだけでは片づけられない面もある。
 一番街は昨年5月、市の負担金でショッピングモールが完成した。車を締め出し、消費者に親しまれ、個性的で魅力あるショッピングロードが誕生したのである。このモール化が完成してわずか1年足らずで大型店が閉店するというのは、何とも皮肉としかいいようがない。
 問題は商店街のリニューアルは進んだが、各個店のリニューアルがそれにともなっていかない、という点にあるようだ。消費者は今、ショッピングを楽しむのみならず、そこで遊び、くつろげる都市空間や生活のシナリオを提案する新しいタイプのまちを求めている。
 個々のお店もそして商店街も、モール化の意味をもう一度じっくりと考え直す必要があるだろう。

  246サミット(91・5・15)

 「ルート246を走ると日本の未来が見えてくる」とは長洲知事の言葉である。つまり246号沿線はハイテク、頭脳型産業のモデル・リーディングゾーンとして将来が期待されるという見方だ。
 神奈川県と静岡県の政・官・財界のリーダーが集まって神静圏の未来を考えるという「246サミット」が、5月9日厚木市で開かれた。今年で4回目である。基調報告を行った東海大学の三浦宏一教授が、「山梨県のリニアに対して246よりも249サミット」という考え方を提言した。249とはルート246に、第一東名と10年後の第二東名をプラスした言葉だそうだ。
 今年はまた、ルート246圏近未来研究会が、「ルート246ハイライフゾーン−真の豊さが感じられる新生活文化圏の創造」を提言した。相模原台地、丹沢山麓、足柄山麓、箱根山麓、富士山麓、駿河湾など圏域を6つのゾーンに分け、県央テクノピア構想や新幹線相模駅整備構想など12プロジェクを模索していくという。
 この「ルート246には未来を先取りした都市空間、最先端のテクノロジーが点在している」という分析を初めて行ったのは、当時、日本長期信用銀行取締役の日下公人氏である。氏が1984年に著した『ハプニング・アベニュー246』(太陽企画出版)には、「東京の盛り場やオフィス街の中心は、だいたい1日に1mの速度で西へ移動している。日本のR246を発祥の地とする流行・生活・文化が地球的規模で駆け巡る日が近い将来必ずやってくるだろう」と書かれてある。
 246サミットはいわば、こうした分析と予測を受けた地域連合の在り方を探る舞台でもあろう。一昔前に道州制が話題となった。昨今は都道府県と市町村の中間にあたる第3の自治体論も登場してきている。21世紀へ向けた地域連合時代の幕開けが確実にやってくる。自治体も「開放行政」時代に突入したのである。

  宅建協会との協定(91・6・1)

 厚木市と市土地開発公社は、公共用地や代替地の取得のため民間の豊富な土地情報を活用することに決め、このほど宅建協会と協定を結んだ。もちろん県内では初めての試みだ。
 民間と競合した時の価格や地価公示価格と実勢価格との格差をどうするかなど、価格の面まで踏み込めないにしても、公共用地の取得や代替地の確保が容易になることは事実である。
 外国の例を紹介しよう。西ドイツでは先買権が市町村に与えられている。同国では土地価格は不動産鑑定士が決め、取引をする場合、当事者はすべて公証人に通知しなければならない。公証人はその取引価格を市町村に通知する義務があるため、土地の取引価格は全て市町村にキャッチされる。
 市町村はその通知を受けて、2ケ月間先買権を行使するかどうかを検討するという。行使しないという宣言を出すまでは、土地の所有権移転登記が出来ないという仕組みだ。
 日本ではとてもこうしたやり方は望めないが、せっかく宅建協会と協定を結んだのだから、民間の土地情報を常時行政に提供するという、データバンク制度を発足させてみてはどうだろうか。これをやると、市や公社による公共用地の先行取得という一歩進んだ対応が可能になるのである。

  地球市民(91・7・1)

 「地球市民」という言葉がある。その響きはとてもいい。誰がこの言葉を創ったかは知らぬが、筆者の記憶では専修大学教授で経済学者の正村公宏氏が1989年に著した『地球市民の経済学』(NHKブックス)という本の中で、初めて公に使ったように思える。正村氏はこう述べている。
 「私たちは、ある都市または町村の自治体の構成員すなわち市民であると同時に、地球に責任を追わなければならない経済大国の国民であり、地球市民の意識を持たなければならない立場に置かれている」
 日本経済の国際化は、資源、食料、労働、環境問題など地球的規模で取り組まなければならない難問を私たちに突きつけている。自治体もしかりで、厚木市が進めている国際文化都市も、地球市民という発想に立ったものだろう。このほどフィリピンのネグロスに車椅子を贈ろうという障害者の行動も、地球市民という意識に裏打ちされたものだ。
 アムネスティ・インターナショナルの世界大会が、この8月に横浜で開かれるが、その大会フレーズも「誕生・地球市民」である。自由と人権、多文化をキーワードに、国境を越えた人権活動の意義を広く訴え、これからの地球市民としての役割を考えていくという。
 私たちは地球市民という言葉の持つ意味を深く考え、意識して使う必要があるだろう。そして「地球市民の自治体学」を早急に構築せねばなるまい。                      

  選挙制度の改革(91・7・14)

 選挙は被選挙権があれば、誰でも立候補出来るが、実際にはカバン、ジバン、カンバンと特定の条件を供えた者でなければなかなか立候補は出来ない。このため、真に市民の代表として推したい人が出ないで、人物、識見など疑われるような人物が立候補したり当選したりする場合もある。
 従って市民のよき代表者を議会に送ることの出来る選挙制度の改革が必要だ。この問題は古くて常に新しい問題だが、なかなか公正な選挙制度の改革は進まない。
 そこで筆者の選挙制度改革試案を披露してみる。その1。誰でも議員に立候補出来るための条件は、立候補しても生活に不安がなく前途が保証されることである。従ってまず金のかからない選挙を行うため、選挙の「完全公営化」を進める。
 その2。市民が議員を選ぶ参考資料や判断材料の提供のため、選挙公報のほかに、立会い演説会や公開討論会など政策論争の場を積極的に取り入れる。
 その3。議員には市民代表としての一定の資質水準が必要であるから、候補者に対して選挙管理委員会(第3者機関でもよい)が一定の学科試験と体力テストを行い、選挙公報で市民に公表する。
 その4。選挙の公平化を資するために、選挙本番以外の個人の事前運動(ビラやパンフレットの配布およびタウン紙などの印刷物に名前や写真を掲載すること)をいっさい認めないこと。政治活動と称して本番まがいの活動がまかり通っているので、こうした「やり得」的なやり方はもうやめにしたい。
 要するに、立候補する人はすべて同じ条件で「ヨーイドン」しなければ公正とはいえないのである。

  議員の人材難(91・8・15)

 厚木市会の臨時議会が8月9日開かれ、正副議長ほか各常任委員会の顔ぶれが決まった。議長人事でいつも思うことはその選出の仕方である。
 まず最大会派から選ぶ、次に職責にふさわしい人、当選回数順などが基準になってくるが、時としてこの基準がうまく当てはまらない場合が出てくる。つまり1年交代によるたらい回しで、玉がそろわなくなるというケースである。厚木市会もたらい回しを続けているため、人事がスムースに運んだ試しがない。
 最大会派の市民クラブは10人のうち4人が議長経験者、3人が2期生、2人が1期生、1人が3期生である。この中で議長候補者というと3期生の和田氏1人。また、第2会派の自民クラブも6人のうち2人が議長経験者で、3人が1期生、1人が3期生である。候補者となるとここも太田氏1人である。和田氏が副議長を経験せずに、一足飛びに議長に就任した背景にはこうした状況がある。
 一方、民社党の3人は副議長経験者で、共に議長候補。公明党も4人のうち2人が副議長候補である。来年はどうなるのか。最大会派か当選回数順か、人物本位かそれとも議長経験者の再当番か。1年交代でやろうとすると、いつしかタマがなくなり必ず無理がいく。要するに人材難なのである。新しいルールが必要だ。
   
  自治体と外国人労働者(91・9・15)

 外国人労働者が急激に増えている。内外の経済格差と日本企業の人手不足が構造的な要因だが、この問題は日本政府が制度的にしっかりと取り組まなければ大変な問題になろう。
 厚木市の外国人登録数は、9月1日現在、2,255人。昨年同期に比べると約57%の増加。特に今年に入って急激に増えているという。政府は日系人を除いて、外国人労働者に対してまだ制度的な対応を打ち出していない。
 外国人の雇用方法は2つある。その1つは出稼ぎコントロール方式で、言葉など一定の資格を満たした外国人に、期間を限定して国内での就労を認めるという方法だ。もう1つはインテグレーション方式。外国人労働者を日本人と同様に日本社会の中に受け入れ融合させる方法である。具体的には永住権を与え、税金を微収する代わりに年金も給付するなど日本人と同じ条件で働くことが出来る。
 言葉や標識、医療、教育、税金、年金など制度的に取り組む問題が次から次に出てこよう。外国人労働者の多い自治体では、言葉や標識など独自に取り組んでいるところもある。
 厚木市では今年、市内在住の外国人意識調査を行うというが、他の自治体に比べて対応はことのほか遅い。早急な施策を望みたい。

  都市の血管(91・10・1)

 厚木市の再開発事業が目白押しだ。今月中に3つの大型プロジェクトが同時にスタートする。
 1つは相模川沿いで始まる東部第2地区市街地開発事業。2つ目はパルコがキーテナントになる中町2丁目B地区市街地開発事業。3つ目は中央公園北側の寿町3丁目市街地開発事業だ。
 市街地の整備や再開発でいつも感ずるのは、導線の確保と駐車場対策である。街全体の中での道路や駐車場の整備が位置づけられないと、機能性や連結性、効率性を欠いたものになってしまう恐れがある。例えば小田急通りの地下道やサンデッキなどは、その最たる例だろう。
 地下道はパルコが出来るところまで延伸するというが、中央通りまで接続するという計画はない。サンデッキも作ったのはいいが利用度は何故かことのほか低い。中央公園地下駐車場もしかりである。
 市の事業を見ていると、市民のニーズに合った施策を考えているのだろうかと疑問にさえ思えてくる。完成しても利用度は芳しくないという印象があるのだ。一番の原因は利便性の問題であろう。いくらいいものを作っても使い勝手が悪ければ利用されない。
 人間の体は血管が導線だ。無数の血管の配列は芸術的ともいえるが、厚木市もこの血管をお手本にしてはどうだろうか。

  特産品と村おこし(91・10・15)

 りんごを町の特産品にしようと、愛川町の40戸の農家がりんご栽培に乗り出している。今年で4年目だが、栽培技術も安定して精度も高いため、来年から「愛川りんご」と銘打ってもぎとりの出来る観光農園を考えているという。
 地方にはそれぞれの土地の特産物があり、観光土産品になったり大きな地場産業を形成している場合が少なくない。厚木ではなし、いちご、ぶどう、海老名ではマスクメロンが有名だし、最近ではいちごワインもお目見えした。
 相模地方で昔から知られている特産品に高座豚がある。厚木でも養豚農家が開発したバークエースが特産品として売られており、ハムやベーコン製造の加工工場まである。
 大分県で「一村一品運動」が始まったのは昭和54年である。以後、地方の時代に乗って各地で地域に産業を起こすための様々な取り組みが行われてきた。いわゆる「村おこし」である。「村おこし」とは地域社会の自立を目ざす運動だ。
 地域がその未来を切り開くのに、中央や外部の世界に頼らないで、住民自らの創意と工夫、努力を積み重ね、主体性を発揮しながら地域づくりを試みることである。中央直結もいいが、自立の意味をもう一度考えて見る必要がありはしまいか。

  財界主導のまちづくり(91・11・1)

 厚木商工会議所の役員選挙が行われ、新会頭に黄金井一太氏が就任した。内憂外患で「難しい時期に受けた」と話しているが、新会頭がどんな手綱裁きを見せるか大いに注目したいところである。
 昭和30年の市政施行以来、厚木市の街づくりは行政主導で行われてきた。工場誘致、中心市街地の開発、住宅団地など大規模なものはどれ一つとってもそうである。もちろんそれを否定するものではないし、そうした状況は今日も続いている。
 産業会館にしてしかり、東部地区再開発にしてもしかり、そしてテレコムタウンや鮎まつりの行事などすべてが行政主導なのである。これは許認可や補助金問題がからむため、ある程度はやむを得ないことなのかも知れないが、厚木市はもっと財界がリーダーシップを取ってもいいように思う。
 考えて見れば市税の4分の1は法人市民税である。厚木市の行財政が法人の努力によって支えられているのであるから、法人もただ出すばかりでなく、使い方についても、もっと注文をつけるべきだろう。市民も財界の発想や主導による強力なまちづくりを期待しているのである。黄金井新会頭を軸にした商工会議所の新体制に注目したい。

  あつぎキャプテン(91・11・15)

 「あつぎキャプテン」がスタートして丸3年が過ぎた。この間、行政情報をはじめ、天気、観光などの各種情報をリアルタイムに提供している。中でも最大のヒットは最適列車案内システムだ。これは平成元年キャプテン・フェアーでグランプリを受賞した。
 サービス開始時252台だった端末機は、現在725台、情報提供者も80社から227社に増えた。現在アクセスの1日平均は1万4,700画面である。
 にもかかわらず市民の身近な情報メディアとして定着しないのはどうしてだろうか。果して市民のニーズにあっているのだろうかとさえ思えてくる。
 キャプテンを利用するには通信料の負担や端末機の購入などにお金がかかるし、ニューメディアに対する一般的な拒否反応などいくつかの理由がある。行政主導の第3セクターであるため、経営に不慣れという点も否めない。
 資本金の増資による赤字解消をいつまでも続けるわけにはいかないだろう。今後キャプテンによる地域情報化を図るためには、双方向性の機能を充分に活用したシステムの開発、さらには操作が簡単でしかも安価な端末機の開発が必要であろう。
 今日からダックシティでニューメディアフェアーが開かれる。我々も都市を情報で武装化するという認識をもっと高めなくてはなるまい。

  地下駐車場(91・12・1)

 神奈川県では自動車交通量の増加に伴い顕在化してきた駐車不足に対応するため、このほど「総合的な駐車場対策の基本方針」を定め、来年度の予算案に調査費を盛り込むという。
 駐車場実現の方法はいくつかあるが、今後考えなければならないのは地下の利用であろう。道路、駅前広場、校庭、民有地、企業所有地、中高層住宅の地下などさまざまな地下利用が考えられる。厚木市も市役所前の防災中央公園の地下に大駐車場を作った。
 ところが、この駐車場の利用度が意外に低い。中心商店街から遠く午後10時を過ぎると入出できないというのが敬遠される最大の理由である。都市経営の観点から見ると、駐車場は利用者の歩行距離を考え、商店街や公共施設など目的地の間近に計画的に配置することが定石だ。
 例えば神戸市では歩行距離500m、新潟市、松戸市は150m、長野市156m、高崎市200mといったデーターが出ている。せっかく高いお金を出して駐車場を作っても利用されないのでは何もならない。
 厚木市は地形がフィンガー状態なので、駐車場から目的地までの利用者の許容歩行限度の距離設定は、なかなか難しいだろう。地下の利用はこうした問題を容易に解決してくれるのだが…。

  3適運動(91・12・15)

 島根県に仁摩町という町がある。人口約58,000人、半農半漁のまちであるが、鳴り砂で有名な琴カ浜がある。ここの泉道夫町長は、町長になってすぐ「3適運動」を展開した。その1つに自分の町に適した町のイメージを作ろうというのがある。
 そこから出てきたのが砂時計構想だ。泉町は琴カ浜の鳴り砂を使って5年がかりで世界一の砂時計を作った。役場の前の建康公園の一角に総ガラス製で底辺30m、高さ21mの四角錐型のピラミッドを作り、その中に直径1m、高さ5mの砂時計を入れた。
 建物の中には砂と人間に関するあらゆる資料を集めた。世界の500種類の砂を集め、砂博物館を作ろうというのである。この砂時計は、日本に10カ所あった鳴り砂の浜が現在、環境汚染のために3カ所しか残っていないことから、鳴り砂の浜を残すシンボルにもなっている。
 昨年12月31日、除夜の鐘が鳴り終わるころに砂時計が始動した。1年計だからまもなく今年が終わるが、12月31日の除夜の鐘が終わるころにまた、来年度の砂時計が始動する。
 仁摩町ではこの砂時計を作って以来、観光客が急激に増えたそうだ。厚木市も博物館を作るというが、自分の町に適したものがあるだろうか。

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