2010.1.1新春インタビュー  小林常良厚木市長に聞く

インタビューに答える小林常良厚木市長

1期目の仕上げの年を迎えて

 あけましてめでとうございます。100年に一度の金融・経済危機とデフレ不況が続く中で迎えた2010年。税収の減収、雇用・生活不安などは地方自治体にも深刻な影響を及ぼしています。そうした中で厚木市では昨年、新総合計画「あつぎ元気プラン」がスタート、今年2年目を迎えます。元気あふれる創造性豊かな協働・交流都市をどうつくっていかれるのか。2010年度1期目の仕上げの年を迎える小林市長に、市政運営についてお話をうかがいました。(聞き手は山本耀暉」編集長)

選択と集中でプランの着実な推進

キーワードは「市民協働による地域力の向上」

 「現地対話主義」で市民協働によるまちづくり

 ■新年を迎え、市長の任期も残り1年余となりました。平成22年度は1期目の仕上げの年にもあたります。市長の所信をお聞かせください。
 
小林市長 早いもので、市政の舵取りを託され3年が経過しようとしておりますが、その間、私の信念である「現地対話主義」に基づき「まちづくりフリートーク」や「移動談話室」などにより直接市民の皆様と対話し、市民の皆様の思いを積極的に市政に反映し、市民協働によるまちづくりを推進するため、鋭意努力をしてまいりました。
 お蔭様で、市民の皆様と策定いたしました第9次厚木市総合計画「あつぎ元気プラン」が、平成21年度からスタートし、将来都市像である「元気あふれる創造性豊かな協働・交流都市 あつぎ」の実現に向け、安心政策を始めとする5つの政策を基本に、これら5つの政策分野を越えた横断的、多面的に取り組む「ひと」、「まち」、「くらし」に視点を置いた3つの重点戦略を掲げ、それぞれの施策により効果的かつ効率的な展開による市民サービスの向上を図っているところでございます。
 今年は、実施計画の2年目という実動期を迎え、より一層の推進に向けて邁進する所存ですが、ご承知のとおり、百年に一度といわれる世界同時不況の中、これまでにない厳しい財政状況を強いられることが確実であり、その中において、「選択と集中」による事業の優先度や先送り等を視野に入れたプランの着実な推進を目指すとともに、市民協働による地域力の向上こそが本市の持続的発展を遂げるためのキーワードであると考えております。

 徹底したゼロベースからの事業の見直しを進める

 ■長期化する景気低迷、デフレ不況のもとで、平成22年度は法人市民税の大幅な減収が見込まれます。歳入歳出のバランスをどう考えて予算編成に取り組まれますか?
 
小林市長 平成22年度予算については、百年に一度といわれる世界同時不況の影響を受け、大幅な税収減など、当初予算はこれまでに例のない厳しい予算編成となっております。
 このような状況でありますが、限られた財源を有効に活用するためには、市民の立場に立って、様々な角度から、徹底したゼロベースからの事業の見直しを行うとともに、市民の皆様が、将来の生活に不安を抱いている現状を払拭するためにも、事業の実施については、2年目を迎える「あつぎ元気プラン」の「安心政策」等の「五つの政策」を着実に進め、現地対話主義による市民要望を反映するとともに、景気対策、少子高齢化対策、環境対策、教育対策等に配慮しながら、市民の「暮らし」を守る政策の実現に向け、予算編成に取り組んでいるところであります。


 「セーフコミュニティ」平成22年中の認証取得目指す

 ■平成22年度に取り組む重点施策や条例の制定などについてお聞かせください?
 
小林市長 これまでの行政主導による行政運営から市民主体のまちづくりという本来の姿に向けて、様々な分野において大きくハンドルを切ってまいりました。
 平成22年度は、市政1期目の最終年度に当たり、集大成の年として位置づけ、市長就任以来、市民の皆様と取り組んでまいりました「WHOにおけるセーフコミュニティの認証取得」や「自治基本条例の制定」という市民協働によるまちづくりの理念を具現化するために動き出す節目の年でもあります。
 まず、セーフコミュニティの認証取得につきましては、現在、市民や地域、警察、行政等が協働・連携を図り、対策委員会やモデル地区における活動が実践されているほか、安心・安全に向けた様々な取組が市内全域で行われています。こうした状況の中、いよいよ、認証申請書をアジア地域WHOセーフコミュニティ認証センターに提出し、平成22年中の認証取得を目指します。

「自治基本条例」平成22年度中に条例制定

 また、自治基本条例は、市民や行政などまちづくりに関わる全ての人が共有する自治体運営のルールを定めるものであり、その制定過程は大変重要であります。これまで、公募市民で組織する市民会議からの提言をいただくなど、条例に規定する内容について2年という長い期間をかけて検討してまいりました。そして平成22年度中の条例制定に向けて現在準備を進めているところであります。
 このほか、「あつぎ元気プラン」の5つの政策を基本とした実施計画事業の着実な推進に向けて、大変厳しい財政状況の中、市民の皆様の「暮らし」を守る政策を第一に考え、市政運営のリーダーとして「元気なあつぎ」の創造に向けて、気持ちを新たにしているところであります。

22年度も中小企業対策・中心市街地活性化対策進める

 ■景気対策と市民の生活支援のため、平成22年度も引き続き、雇用対策・中小企業対策・商業活性化対策、元気商品券の発行などに取り組まれますか?
 
小林市長 中小企業対策としては、融資制度を始め、見本市等出展事業やサテライトショップ事業など、中小企業者の事業拡大につながる支援を進めてまいります。
 また、商業活性化対策としては、中心市街地商店街空店舗対策事業やエンゼルサポート事業を始め、商店会連合会や単位商店会への支援を進めてまいります。

「セーフコミュニティ」モデル地区の取り組みで推進体制を確立

 ■厚木市は平成22年度中に「セーフコミュニティ」の認証取得を目指しており、自治会など市民の安心・安全なまちづくりに対する取り組みも活発ですが、認証取得に向けた今後の課題や体制作りをどうお考えでしょうか?
 
小林市長 平成20年1月にWHOセーフコミュニティ導入の宣言を行い、平成20年6月に「セーフコミュニティ推進協議会」を設置し、平成21年4月には「あつぎ元気プラン」に位置づけました。以降、八つの「対策委員会」や「外傷サーベイランス委員会」の設置、「モデル地区」での取り組みなどにより市民協働によるセーフコミュニティの推進体制も確立してまいりました。市では対策委員会などで出された行動計画の素案や既存データ及びアンケート調査の結果などをもとに作成した認証申請書をこの3月には韓国にあるアジア地域WHOセーフコミュニティ認証センターに提出し、本年中の認証取得を目指していきたいと強く思っています。また、市民の認知度を更に高めていきたいと考えます。

「にぎわい爆発フェスティバル」鮎まつりと並ぶ2大イベントに

 ■厚木市は中心市街地活性化の起爆剤にしようと「にぎわい爆発フェスティバル」などのイベント開催に取り組んでいますが、その集客効果(商店街を訪れる人の数や回遊行動、販売実績など)をどのように把握し評価されていますか? また、集客効果を上げるため、中心市街地にある公営駐車場の利用料金を、イベント開催時だけ引き下げるお考えはありませんか?
 
小林市長 「にぎわい爆発フェスティバル」は、にぎわい爆発あつぎ国際大道芸2009を中心イベントとして、昨年の11月7日、8日に開催しました。幸い好天に恵まれ、市内外から11万2千人の皆様に御来場いただきました。
 御来場された皆様は、13箇所の演技ポイントをはじめ、商店ブースやアート楽市、商工会議所そして同日開催の各種イベントを広く回られ、2日間を十分に楽しまれたと聞いております。公式ガイドブックに広告を掲載された57店舗から当日の状況をお聞きしましたところ、市外からのお客様や新規のお客様が多く来店し、売上が伸びたなどと商業振興に結びつく成果が得られております。
 来年度以降の開催についても小田急線沿線の最大級の大道芸イベントとして、ぜひ続けてほしいなどうれしい言葉が寄せられています。
 今後も鮎まつりと並ぶ秋のイベントとして開催し、まちのにぎわい創出と商業振興に引き続き力を注いでまいりたいと思っております。
 また、集客効果を上げる手段として利用料金を引き下げることについては、なかなか難しい問題かと思います。イベントによっては入庫待ちになるケースもあるからです。
 実は、本市の中心市街地には、中町立体駐車場と厚木中央公園地下駐車場の公営駐車場がありますが、厚木中央公園地下駐車場については、ここ数年売り上げ、また、利用台数が減っている状況であることからも、駐車場運営のあり方を考えなくてはいけないと思っております。したがって今後は利用者へのサービス向上や利用料金等、経営形態の見直しなども含め検討する必要があると考えております。

「B-1グランプリ」全国から30万人を超える来場者見込まれる

 ■B級グルメの日本一を決める平成22年度の「Bー1グランプリ」が今年の9月、厚木市で開催されますが、会場の選択と設営、駐車場施設などの受け入れ対策をどのようにお考えでしょうか?
 
小林市長 今年9月18日・19日の2日間、厚木中央公園をメイン会場として「B級ご当地グルメの祭典!B\1グランプリin厚木」が開催されます。
 大会初の首都圏開催となることなどから、安くておいしいB級グルメを求め、全国各地から30万人を超える来場者が見込まれております。
 現在、実施主体であります「B―1グランプリin厚木実行委員会」におきまして、会場及び駐車場等への誘導や警備体制など、関係機関と調整しながら、安全・安心な開催が行えるよう準備を進めております。
 本大会は、厚木の良さを全国に発信する絶好の機会として、市民の皆様とともに、厚木を訪れる方々を、おもてなしの心でお迎えをしたいと思っています。

「市民協働事業提案制度」新年度は2団体を採択

 ■地域内分権と市民協働事業を包括的に進めるため、例えば公民館と地区市民センターの運用と管理を、自治会やNPO団体、地域住民などに移譲して行政改革を進め、「自分たちの地域は自分たちでつくる」という新たな地域自治の創設に向けた制度改正に取り組むお考えはありませんか?
 
小林市長 公共施設の運営等につきましては、維持管理費用の増大やその管理手法といった様々な課題を抱えている中で、第4次厚木市行政改革大綱(あつぎ元気アップ改革)の行政改革推進の具体的な取組として、「地域の在り方の検討」を位置付け、住民自治の拡充を目指して、地域住民による自主的・自立的なまちづくりを推進するため、地域と市の役割分担や地域運営の仕組み、地域の拠点施設の在り方等について検討を進めることとしております。
 また、平成21年度から地域力の向上を図るため、各地区市民センターに地域力サポーターを設置し、地域活動や生涯学習の支援を行うなど、「地域のことは地域で運営する」という考えに向けて取り組んでおります。
 さらには、市民の方が日頃感じている公益的な課題について、市民活動団体からの提案を受け、市と協働で課題解決に向ける「市民協働事業提案制度」を実施し、11団体もの事業提案から、審査を通じて最終的に2団体が採択されたことで今後、市民協働による積極的な取組が図られていくことと考えられます。
 こうした地域自治を充実させるためには、市民が、自治の主体として参加や協働をすることができる機会の拡大や自主的に活動することができる環境の整備が何よりも重要であると考えております。現在、制定に向け取組を進めている「自治基本条例」に参加や協働の基本的な考え方や仕組みを定めることで、市民自らが課題を解決しようとする活動が盛んになり、地域自治の充実につながっていくものと考えております。

事業評価に加え、今後は市民満足度などの「施策評価」も実施

 ■国の事業の仕分けが注目されています。厚木市も平成19年度に事業の仕分け、その後の外部評価委員会の導入など事務事業の見直しを進めていますが、市民はあらかじめ選定した事業を対象とするのではなく、すべての事業を対象とした見直しを求めています。事業の見直しについての新たな視点やお考えはありますか?
 
小林市長 地方分権の進展や多様化するライフスタイルなど、行政活動の内容は多様化し、範囲もますます拡大し、しかも質的な向上が求められています。こうした行政需要に応えるためには、より効果的、効率的な事業を選択し、常にその成果を検証していくことが必要であり、事業を振りかえり、反省し、改善をするため、厚木市では、行政評価を実施しております。
 行政評価は、行政活動を統一的、客観的に評価し、評価結果を行政経営に反映させるとともに、より効果的な事業に変えていくというPDCAサイクルを行うことが期待できます。
 平成19年度から、行政評価の一環として、内部の評価だけではなく、外部の評価として、平成19年度に「事業の仕分け」や平成20・21年度に「外部評価」を実施しました。
 「事業の仕分け」や「外部評価」は、時間的な制約があるため、選択した事業を実施しております。しかし、評価対象の事業のみでなく、類似事業についても同様に評価の結果を踏まえて改善等を実施しております。
 また、新たな取り組みとして「あつぎ元気プラン」がスタートし、元気プランの施策ごとに、市民満足度の数値及び成果指標の達成度を用いて評価をする「施策評価」を今後、実施する予定です。市民の皆様から御意見をいただきながら、事業の見直しを実施してまいります。

「ごみ中間処理施設」平成22年度に再検討委員会を再開、選定作業進める

 ■厚木愛甲環境施設組合の中間処理施設の建設候補地について、平成20年4月、厚木市は学識経験者を含め7人の委員を委嘱して「ごみ中間処理施設建設候補地再検討委員会」を立ち上げ、選定作業の見直しを進めていましたが、市は棚沢を候補地から除外しただけで、いまだに候補地選定の目処がたっていません。検討委員会の存在と建設候補地の選定作業は現在、どのようになっているのでしょうか?
 
小林市長 ごみ中間処理施設の建設候補地につきましては、対象となりました複数の候補地について再検討委員会から検討結果の報告があり、この結果を受け、施設整備・施設運営の視点から更なる検討が必要との判断から、平成21年2月に厚木愛甲環境施設組合へ調査検討依頼をいたしました。
 今後につきましては、組合からの検討結果の報告を受け、平成22年度に再検討委員会を再開し、候補地の選定を進めていく予定です。

 ■市民が待ち望んでいた市立病院の産科外来診療が、いよいよ再開されると聞きましたが?
 
小林市長 多くの市民の皆様にご心配をお掛けしていました産婦人科は、昨年10月に常勤医師1人を新たに確保できたことから、常勤医師2人、非常勤医師2人の体制になりましたので、本年1月4日から産科の外来診療を再開します。まだまだ、常勤医師数が十分でないため、当面の間、妊娠初期で合併症のない方のみ、月10件程度の分べん受け付けとなります。また、安全確保の面から院内のバックアップ体制を整えるため、原則として1月から3月までは分べんを行いませんが、年の初めに再開のスタートをきれることは私にとってもこの上ない喜びです。今年も、さらなる常勤医師の確保に向けて、全力で取り組んでいきたいと考えております。

「ごみ減量化・資源化新システム」で資源が66%増加、ごみは16%減少

 ■平成26年度までに資源化率35%を達成するという「ミッション35」に向け、昨年10月19日にスタートした「ごみ減量化・資源化新システム」の導入に伴うこれまでの成果についてお聞かせください。
 
小林市長 新システムにつきましては、市民の皆様の御理解・御協力の下、順調に推移しており、導入後1月を経過した11月を前年度と比べますと、資源収集量は約66パーセント増加し、ごみ収集量は約16パーセント減少しております。
 ■神奈川県が計画している「県立相模三川公園」は海老名市側の整備がほぼ終了していますが、厚木市側(金田地区)はいまだに都市計画決定もされていません。平成9年6月に改正された河川法は、従来の治水・利水のほかに環境に配慮した川づくりと、沿線自治体や地域住民の意見の反映を定めています。厚木市は県の三川公園計画に対してどのようにコミットし協力していかれますか? また、計画地内にある金田地区の土地所有者から開発の陳情も出ていますが、これに対しては市はどのように対応していかれますか?
 
小林市長 県立相模三川公園については、本市政策理念83項目の一つに掲げており、事業主体である神奈川県と協力しながら、公園の実現化を図っております。組織的にも平成20年度から担当課長を配置し、地元との交流や神奈川県との協議等が一層円滑に進むよう努めているところであります。
 こうした中で計画区域内の土地所有者をはじめ地元自治会等からも開発に関わる強い要望もいただいており、種々検討した結果、土地所有者の立場を考慮すると開発もやむを得ないと判断し、市といたしましても計画区域から開発予定地を除外するよう神奈川県に対して意向を伝えております。
 今後も自治会長をはじめ地元の皆様と意見交換等を行いながら、整備内容に反映できるよう引き続き神奈川県と協議を重ね、公園計画の実現に向けて、調整に努めてまいります。

 ■今年も期待しています。本日はどうもありがとうございました。