インタビューに答える山口巌雄厚木市長

2006.1.1新春インタビュー

 山口巖雄厚木市長に聞く

「新生あつぎ」の創造に向けて

 明けましておめでとうございます。厚木市は昨年2月1日、市制50周年を迎え、「新たな都市の再生」に向けての第一歩を踏み出しました。地方分権とは自己決定権と自己責任を拡充することにあります。多くの自治体が「都市の再生」を課題として抱える中で、今後、厚木市はどう変わっていくのか、新春を迎えて、山口巖雄市長に市政舵取りの抱負をお聞きしました。(聞き手は山本耀暉編集長)

「心輝くまちづくり」がスタート―行政・教育・地域経済など「骨太の改革」に着手

 ■厚木市は昨年2月1日、市制50周年を迎え、50年後、100年後の「新たな都市の創造」に向けてその第一歩を踏み出しました。中・長期的に見て今後の厚木のまちづくりをどのようにお考え、位置づけておられますか。
 山口市長 地方分権や少子高齢社会の進展、団塊の世代の大量退職や人口減少社会など、地方公共団体を取り巻く社会情勢は変革期にあり、将来大きく様変わりし、ますます都市間競争が激化していくものと認識しています。また、厚木市においては、さがみ縦貫道路、厚木秦野道路、第二東名自動車道といった広域幹線道路が市街地を取り囲むように建設され、新たに4つのインターチェンジが設けられる予定であります。
このような中で、社会情勢の変化への迅速な対応を図るとともに、大山や相模川に代表される「豊かな自然」、首都圏の拠点都市としての「中心性」、人や情報が活発に交流する「まちのにぎわい」などという厚木市の特徴を活かした、個性あるまちづくりを市民協働により推進していかなければならないと考えております。    
 ■平成18年度の主要施策、目玉事業はどんなもになりますか。
 山口市長 平成18年度は、新たな50年を念頭においた「新生あつぎ」の創造に向けて、「輝」の一文字に心を込め「心輝くまちづくり」をスタートさせ、近未来を見据えステップアップする重要な年であると考えております。
 このような中で、時代の変化に迅速に対応し、「市民が主役」のまちづくりの推進に向けて、職員一丸となって常に意識を改革し、あつぎハートプランの将来都市像や基本目標の実現を目的とする新たな施策を展開するため、平成20年度からの第二期の基本計画策定に着手してまいります。
 また、本年は、最大の行政課題である交通渋滞解消対策において、環状2号線、3号線など環状系道路や厚木バイパス線と国道246号との接続など基軸となる幹線において整備を完了し皆様の目に見える形で、成果を示すことができます。
 次に、小児医療の所得制限など要件の一部廃止や夜間保育の実施など、「チャレンジエンジェル20」を着実に推進するとともに、「かなちゃん手形の普及促進による高齢者の外出機会の拡大や健康の増進など「元気老人80運動」を強力に推進し、赤ちゃんから高齢者までが、元気で健やかに暮らせる環境の整備を図ってまいります。安心・安全なまちづくりとしては、子どもに対する凶悪事件が続発する世相や防犯対策に対する要請の高まりを踏まえ、子どもに対する安全対策の徹底とともに駅周辺における環境浄化に努めてまいります。
 皆様に希望を与える魅力的なまちづくりとしては、本厚木周辺における無電柱化や歩道のバリアフリー化を推進するとともに、緑化や都市水路の整備などについて検討を進め、中心市街地において「水と緑と太陽のまち」を実現し、潤いと安らぎを感じていただけるまちづくりを進めてまいります。
 また、豊かな自然は本市の貴重な財産であるため、この資源を最大限に活かしながら、アウトドアライフ志向が中高年を中心に高まっている状況を踏まえ、地域再生計画の具現化に向けての七沢・飯山地区における観光誘客のための施設整備等についても検討を進めてまいります。
 本市の活力を高め、賑わいを創出する施策としては、現在も優良企業が多数立地し、まちの活力源となっている現状を踏まえ企業誘致を積極的に推進するほか、中心市街地においても、市街地再開発事業等による都市の再構築とともに、商業や業務機能の誘導を推進してまいります。
 次は、未来を担う人材づくりについてですが、新たに中学校1年生において理科補助教員の派遣や、子どもチャレンジスポーツの開催、こころのサポート事業など、知育、徳育、体育と全面にわたり、教育改革プランを確実に推進してまいります。また、団塊の世代が地域社会に入ってくることを想定しながら、「お疲れ様でした。お帰りなさい。」の精神で生涯学習の充実に努めてまいります。
 芸術と文化を奏でるまちの実現に向けては、皆様にとって有意義な余暇となるよう文化会館を中心とした事業展開の充実に努めるとともに、引き続きハーモニカのまちづくりも進めてまいります。
 さらに、国が進めている構造改革の潮流に沿って、今まで取り組んでまいりました、行政改革、教育改革、地域経済改革の集大成として「骨太の大改革」に着手するなど、(2面に続く) 市民の皆様が安心して安全に生活でき、快適さを享受できるまちづくりを推進するため改革のスタートの年にしてまいりたいと考えております。

新たに「政策査定」を導入


 ■新年度の予算編成についての基本的なお考えをお聞かせ下さい。
 山口市長 昨年度から実施しました「部等別総枠配分方式」に加え、新たに「政策査定」を取り入れ、今まで以上に政策面から事業内容をチェックし、市民の皆さんが、「安心、活力、満足を実感できる予算」を編成できるよう取り組んでいるところでございます。
 特に、総合計画「あつぎハートプラン」に位置付けた実施計画事業を基本に、三大施策及び「IT、ハイウエー、ハーモニカ」の3つのまちづくりを着実に推進するため、限られた予算を必要な事業に効果的に配分してまいりたいと考えております。
 また、本市の重要な課題であります交通渋滞解消に向けて、平成18年末の完成、開通を目指し、温水恩名連絡道路、大井交差点ミニバイパス、金田の国道246号ランプ、厚木環状2号線の温水・長谷・愛甲地区及び厚木環状3号線の愛名地区の道路整備を重点的に実施するなど、平成17年度に引き続き道路整備を着実に進めるために予算を配分したいと考えています。
 さらに、「治安」、「環境」、「教育」、「医療」及び「福祉」の5分野に係る事業など、将来において投資的効果が期待できる事業及び市民が施策の効果を実感できる事業を見極め、予算を重点的に配分してまいりたいと考えております。
 具体的な事業につきましてその一部をお話をいたしますと、小児医療費の助成につきましては、今まで0歳児だけ所得制限を撤廃していましたが、平成18年度からは、小学校就学前まで所得に制限なく助成する予定でございます。また、新たに夜間保育の実施に向けた予算措置や児童手当の年齢制限や所得制限の緩和など少子化対策を実施する予定でございます。
 高齢者、障害者施策につきましてはその充実を図るため、老人憩の家・児童館複合施設の建設や精神障害者に対する福祉手当及び配食サービスを新たに実施する予定でございます。また、子どもに対する安全対策の充実を図るとともに、ひとり暮らしの高齢者や障害者を対象に家具等の転倒防止対策工事に係る費用の一部を助成するなど、防犯対策や耐震対策を新たに実施いたします。
 中学校給食につきましては、平成19年度から実施できるよう、各中学校に給食配膳室を整備するとともに、北部学校給食センターをリニューアルし、中学校給食調理施設としての機能を整備いたします。
 さらに、本厚木駅南口の再開発に着手するほか、連節バス運行システムを導入するための補助金の交付、国土交通省から指定されたスーパーモデル地区となっている本厚木駅前の歩道のバリアフリー化・面的無電柱化の実施など本市の顔となる本厚木駅前の機能を充実してまいります。
 なお、予算の規模につきましては、平成17年度当初予算を若干上回る規模にしたいと考えております。

企業誘致 今年度中に6社適用


 ■厚木市は昨年1月から5年の時限立法ともいえる「企業等の誘致に関する条例」を施行しました。進出企業を含めたこの1年間の成果をお聞かせ下さい。
 山口市長 市制50周年を契機として地域経済の活性化を図るとともに、市民の皆様の雇用機会の拡大と生活環境の向上を図ることを目的に、「厚木市企業等の誘致に関する条例」を昨年1月から施行いたしました。本条例を施行以来、職員による100社を超える企業訪問を始め、条例の説明会、広報紙などへの掲載、関係団体への広報や全国に向けたアンケート調査などによるPR活動を積極的に進めてまいりました。
 おかげさまで、40社を超える企業から誘致に関する相談をいただき、現在、ソニーを始め3社の適用がありました。さらに、今年度中に6社の適用が予定されており、今後、この条例に基づき立地された企業等による地域経済への波及効果を大いに期待しているところでございます。
 ■一昨年4月、本厚木駅周辺の20ヘクタールが「都市再生緊急整備地域」に指定されました。官から民への流れの中で、中心市街地の活性化問題は、商店街を含めた民間の自助努力をいかに促すかが大きな課題でもあります。厚木市が取り組んでいる中町2\2地区周辺と本厚木駅南口の再開発計画についてお聞かせください。
 山口市長 中町第2―地区周辺は、交通結節点としての特性を生かし、商業・業務・居住機能等を導入することによって、一層の広域的求心力を持つ魅力ある複合施設の集積拠点として民間活力導入手法を取入れ、誰もがつどい親しめる都市空間の創造を推進します。本厚木駅南口地区は、交通結節点の機能向上及び商業・業務機能の導入による駅前にふさわしい「あらたな顔」を創出します。
 ■昨年4月、千葉県市川市は「納税者が選択する市民活動団体支援制度」を全国で初めてスタートさせました。個人市民税の納税者が自ら支援したい市民活動団体を選ぶと、その納税額の1%を市から補助金として交付する制度で、他の自治体から大きな注目を集めました。この制度についてどうお考えですか。また、導入のお考えはありますか。
 山口市長 市川市の制度につきましては、税についての関心や納税に対する意欲を高め、市民の意向を市政に反映させる一つの手法であると認識しています。今後、厚木市にとって必要なことは何か、どのような政策がふさわしいのか、慎重に研究を重ねた上で、市民の皆様との協働による住みよいまちづくりを進めていく政策を展開してまいりたいと考えております。
 市民活動団体への支援制度といたしまして、平成14年に「厚木市市民活動推進補助金」交付制度を設け、市民公益活動事業に対し補助金を交付するなど、市民活動団体への財政的支援をしております。この補助制度は、市内の市民活動団体が行う公益活動事業に対し補助する制度で、補助対象経費(報償費、需用費、使用料)から事業に係る収入を控除した額の2分の1又は20万円のいずれか低い額を上限として補助するもので、多くの団体に利用されております。
 ■国・地方財政の三位一体改革で、政府・与党が合意した補助金削減と税源移譲について、厚木市はどのように受け止め、評価されていますか。
 山口市長 評価する点は、税源移譲、国庫補助負担金の廃止・削減及び地方交付税の見直しを行うことは、国の関与や国への依存体質から脱却し、各地域に合った行政運営が可能となり、国・地方を通じた抜本的な行財政改革に繋がるものと期待しております。
 しかしながら、補助金が全廃のうえで税源移譲なら地方の権限になりますが、国庫負担率引き下げだけによる一般財源化では、以前とは変わらないこととなり、地方行政の効率化や創意工夫の余地は無く、三位一体改革の本旨とはかけ離れてしまっている点が評価できないところでございます。

ごみ中間処理施設 地元の理解いただけるよう努める


 ■厚木愛甲環境施設組合の中間処理施設の建設候補地に厚木市が同市棚沢を選定した問題で、地元棚沢地区、上三田、下川入地区自治会が反対を表明しています。また、棚沢地区と愛川町では11年前に「不快施設はつくりません」という協定書を締結するなど、新たな事実にもとづく反対運動も起きています。厚木市は地元合意を含め、選定の問題について今後どのように取り組まれますか。
 山口市長  昨年6月に棚沢地区を候補地として選定し、厚木愛甲環境施設組合に報告をさせていただきました。現在、組合で候補地の調査を進めておりまして、その調査結果により厚木愛甲環境施設組合で最終的な判断をしてまいります。
 現状、棚沢地区などの自治会から計画の無条件・撤回を求める陳情が寄せられておりますが、市民生活により発生するごみを適正に処理するための中間処理施設は、必要不可欠な施設でございますので、地元の皆様にご理解をいただけるように努めてまいりたいと考えております。
 また、平成6年に愛川町と葬祭場建設反対棚沢地区対策委員会とで締結された協定書につきましては、愛川町がこの協定書に基づき真摯なご判断をされることと思います。
 ■世界規模で流行が懸念されている新型インフルエンザが大流行した場合、県内の死者は最大で約6800人に達する恐れのあることが、県の試算で明らかになりました。感染症指定医療機関として市立病院を抱えている厚木市としては、この対策にどう取り組まれますか。
 山口市長 平成17年11月25日現在、WHOに報告されております人への高病原性鳥インフルエンザの感染国については、中国をはじめ4カ国であり、日本ではまだ、確認をされておりませんが、新聞等報道機関で大きく取り上げられているところであります。
 国(厚生労働省)が策定した「新型インフルエンザ対策行動計画」では、地方自治体の協力として都道府県レベルでの対策本部の設置、具体的な行動計画の策定などとなっており、平成17年12月に「神奈川県新型インフルエンザ対策行動計画」が策定されましたので、厚木市といたしましては、市民の安全を第一と考え、今後、県との連携を密にし、積極的な情報収集に努めてまいります。なお、インフルエンザ予防については、人混みなどから帰宅した際には、手洗い・うがい、マスク着用等の基本的な感染症防御方法の実施や感染者に接触しないという個人レベルでの感染防止策の徹底が重要でありますので、啓発用のポスターやチラシを作成し、インフルエンザにかからないための周知に努めてまいります。

 ■第3セクター「厚木テレコムパーク」が、自力再建を断念し、民事再生法の適用を申請した問題で、テレコムタウン計画を立案した厚木市の政策責任、筆頭株主としての経営責任をどう考えておられますか。
 山口市長 厚木テレコムパークは、当時郵政省が提唱しておりましたテレコムタウン構想に基づき、地域の振興に資する目的で官民が協調して設立した会社で、東名厚木インターチェンジ周辺地区のまちづくりの先導的役割を果たすべく業務機能の集積等を目指し、不動産賃貸業及びビル管理事業を主たる業務として事業を開始しており、現在、情報通信や研究開発企業等の集積がなされ、アクストメインタワーを中心に5千人近い方が就労されています。こうしたことから、本市の地域経済への波及効果があったと認識しております。
 市といたしましては、これまで自主再建を目指してきた過程において、経営の安定化のための助言をしてきたところですが、この度、会社として法的再建に踏み切らざるを得なかったことについては、残念ではありますがやむを得ないものと判断しております。こうした事態になったことで、市民の皆様を始め各方面の方々に多大なご心配をおかけすることになり、誠に申し訳ないと思っております。この度の再生手続によって、厚木テレコムパークの再建が果たされ、将来に向かっての新たな第一歩が踏み出せることを切に望むものでございます。
 ■学力低下によるゆとり教育の見直しが進められている中で、厚木市が教育改革の一環として取り組んできた「まなびを開く学校づくり推進事業」「35人学級」「学校選択制」や「副校長制」導入の成果についてお聞かせ下さい。
 山口市長 「まなびを開く学校づくり推進事業」につきましては、全国に類を見ない事業として、各学校において、地域や児童・生徒の実態に応じた特色のある創造的な教育を主体的に展開しており、学校と保護者、地域とのつながりが深まり、開かれた学校づくりを推進することができました。
 「35人学級」につきましては、小学校1年生が早く学校生活に慣れ、基礎的な学力の向上や基本的な生活習慣の習得などを目的に、市費により9人の非常勤講師を配置して、全ての小学校1年生が35人以下の学級となるようにいたしました。実際には、30人以下の学級となっております。教師が一人一人の児童と接する時間を多く持つことができ、学習の進度やつまずきを把握し対応でき、授業中の児童の発言の機会が増し、児童の活躍の場が増えるなど、教師、保護者からも大変好評をいただいております。
 「中学校選択制」につきましては、新中学1年生の就学予定者全員に就学する中学校の希望をあらかじめ聴取することができ、皆さんが納得して中学校を選択できたことがメリットとなっており、この制度を利用して入学した中学生とその保護者から大変高い評価を受けております。また、数学、英語の授業につきましては、41人の補助教員により、学力の向上にも努めております。
 「副校長制」につきましては、「地域と学校」、「行政と学校」との連携を図り、「開かれた学校づくり」、「特色ある学校づくり」を推進するコーディネーター役として活躍しております。
 また、保護者の皆さんからご要請の高かった中学校給食を平成19年度からスタートさせます。
 ■厚木市は少子化対策として、保育所の入所待機児童ゼロ対策、学童保育、子育て支援センター、乳幼児医療費支援事業などに取り組んでこられましたが、今後新たな少子化対策を用意されておられますか。
 山口市長 今後新たな少子化対策につきましては、保護者の多様な就労形態に対応するため、午後10時まで開園する民間認可夜間保育所の施設整備を、入所待機児童対策を兼ねて行うとともに、私設保育施設における多様で良質な保育サービスの更なる充実を図ってまいります。
 また、少子化対策の一環として、小児医療費助成事業の中で、これまで0歳児以外は所得制限を設けていましたが、小学校就学前までの小児について所得制限を廃止すべく検討しています。さらに、特定不妊治療に対して費用の補助を実施してまいります。
 ■今年も良い年になることを期待しております。ありがとうございました。